かつやが好きで、はっきり言ってオタクレベルである。特に気が触れたようなフェアメニューが大好きで、登場するたび店舗に足を運び、胃袋を破壊されている。そんなわけで2023フェアメニュー全部食べました報告と、かつや攻略に役立つ初心者向けTier表を掲載する。なお、大小ある場合は小、定食と丼がある場合は定食にて喫食した。
■発売日 商品名 (バリエーション:税込み価格)
■2023/01/13 ふわたま白カツ丼(梅:715円、竹:869円)
かつや2023正気枠その1。2022年は重山つら美より激重のデミチキンカツで始まったが、2023年の先頭打者は打って変わって牡蠣醤油が爽やかに香る、白だしの「とじないカツ丼」だった。かつやなのに薄味で、緑と黄色が目立つ異常事態である。もっとも、信じられないくらい分厚い卵と、いつものように巨大なロースカツのおかげでボリュームは満点。これで梅、竹は一体どうなってしまうんだ。フェアメニューが見せる意外性が珍しく(本当に珍しく)正気の方向に作用したふわたま白カツ丼は、『今年のかつやは一味違う』と印象づける一皿だった。
■2023/02/10 牛すき焼きとチキンカツの合い盛り(丼:858円、定食:968円)
日本全国1000万人のかつや者が待ちわびた牛すき焼きが5年ぶりに復活した。なお、5年前の価格は丼で税込み637円であり、物価の高騰を実感せずにはいられない。とはいえそこはかつや、以前よりも牛肉の量が明らかに増えてボリュームアップしている。ボリュームアップをやめろ。普通ファストフード系のすき焼きは玉ねぎ、うどんなどでかさ増しするのが定番だが、かつやは気が触れているのでそんな情けないことはしない。かつやの甘い、メチャクチャ甘い割り下がチキンカツの衣に染み込んで膨らみ経時的に地獄になっていくが、それもまたかつやである。
■2023/03/10 鶏だんごとチキンカツの合い盛り(丼:759円、定食:869円)
かつや2023の狂気枠その1。鶏だんごと言われたら、普通は鳥のひき肉とつなぎや野菜を丸めて茹でるか蒸すかしたものを想像するだろう。しかしかつやは衣をつけて揚げてしまう。なぜ衣をつけて揚げてしまうのか。実はこれがかつやの巧妙なトラップであり、プレスリリースに掲載されている商品画像はトマトソースで団子の全体が覆われていたため、衣をつけて揚げていると認識して事前に覚悟を決めることが難しかったのだ。上げ底容器や内容量減によるステルス値上げが目立った2023年においてボリュームの逆詐欺をする、これがかつやのかつやらしさである。一方で欠点もあり、この軟骨入り鶏だんごは、そこそこ巨大でかつそこそこ頑丈な衣に覆われているため、非常に食べづらい。だが、この問題点への回答が年末に示されることになるとは、この時のかつや者たちには知る由もなかったのである――。
■2023/04/05 タレカツとうま煮の合い盛り(丼:759円、定食:869円)
ササミカツが思ったより巨大であることに目を瞑れば、まっとうに美味しいかつや2023正気枠その2である。八宝菜も天津飯も醤油+オイスターソース系が好きな方で、この五目うま煮の味付けも非常に好み。これで鶏もものチキンカツやロースカツだったら重すぎるところ、脂身のないササミが好相性。ただ、このサイズが2つも丼に乗ったら平野レミ世界観になってしまうことが少し気になる。定食でよかった。煮物系メニューの合盛りはだいたいいつも衣が汁を吸ってどんどんボリュームアップしていく地獄なのだが、これに限っては片栗粉で強めにとろみがつけられていて吸われにくく、最後まで美味しく食べられる。喫食後半でもぶよぶよでない部分が残るためソースでの味変も可能。縦に長すぎてうま煮に沈まない部分が多いだけのような気もするが。フェアで終わらせるには惜しい、恒常メニュー化してほしい一品だった。
■2023/04/28 デミチーズハンバーグカツカレー(836円)
6万食限定で登場した謎の刺客、ハンバーグカツカレー。メンチカツと違うのかと思って食べると、なるほど衣の中から工場で作られたハンバーグ特有の味がする。デミグラスはカレーに混ざってやがていないも同じになり、これなら恒常メニューのカツカレー梅(759円)の方がマシではと考えてしまう。そもそも、かつやのカレーはあまり美味しくない上にカツ丼より高い。感謝祭の時は元の価格が一番高くお得幅が大きいためカツカレーが注文しがちで、その度にかつやのカレーに失望するのがかつや者の定番である。そして感謝祭時期のかつやは混んで吉野家コピペ状態になるため敢えて避けるようになると、かつや者免許皆伝である。ともかく、このメニューは今ひとつだった。そもそもどこからハンバーグかつなどという珍妙なものが、6万食限定で湧いて出たのか。アークランドサービスの各ブランドでハンバーグを扱っていそうなものは見当たらないし、限定数量も6万とは他と比べて極端に少ないし、謎である。
■2023/05/10 かつやの海苔弁(869円)
かつや2023狂気枠その2。カレーの器に米、キャベツ、適当な揚げ物をドカドカ載せた地獄のメニューである。普段のフェアメニューはタレ類で緩和される揚げ物の重さがご覧の通り容赦なく襲いかかってきて、レモンを使わなければ死んでしまう。かつや者は唐揚げへのレモンを嫌うタイプが大半だが(ソースはない、卓上にはある)、このレモンに関しては好判断である。焼け石に水だが。またこのハムカツがね、ハムカツだけでも重いのに間にポテサラが挟んであってメチャクチャ重くてね、軽く食べられるようにと配慮したか申し訳程度に乗ってるタルタルソースも、そもそもタルタルソースって卵+油やんけという現実を叩きつけられるわけで、たいへんにつらい。それでも白飯で緩和しながらならば食べられると思うじゃん? この海苔の下にはハチャメチャな量のおかかが入ってて、米食ってんのかおかか食ってんのかわからんのだ。そもそもカレーの器に海苔弁って何。2022/05/12の大人様ランチも大概だったがこれもなかなかキツい。年始に感じた正気の予感が次第に薄れ始める初夏の怪物だった。
■2023/06/09 豚カルビ焼肉とチキンカツの合い盛り(丼:869円、定食:979円)
キミ宣材よりチキンカツがデカくないっすか? 5月末の価格改定により少し値上がりしたかつや2023フェアメニュー第7弾。豚焼肉は2022/09/16の『ロースカツと豚焼肉の合い盛り』以来の再登板だが、業務スーパーの冷凍品のように塊になった薄切り肉から業務スーパーの冷凍品特有の味がしてタレまで業務スーパーっぽかった前回に比べて焼肉部分が大いに改善されていた。それはともかくチキンカツがデカすぎる。2022/11頃からこのチキンカツとおそらく同じものを用いた『ねぎ味噌チキンカツ定食』と『タルタルチキンカツ定食』が恒常化しているが、それぞれ825円である。フェアメニューの価格設定バグってません? デカく見えるのは写真だとチキンカツの一部が豚肉で隠れているからで、かつやはまたも逆パネマジをやってしまったことになる。味付けはいつものかつやらしい甘み強めの濃い味で、茶色・濃い味・ボリュームで攻める王道フェアメニューだった。
■2023/07/07 とんこつチキンカツ丼(通常:869円、チャーシュー増し:1089円)
かつや2023狂気枠その3。多くの人が星に願いを託す七夕に、思い出すのもおぞましい怪物が誕生してしまった。かつや者としてはこういう時こそチャーシュー増しに挑まねばならないとも考えたが、大人の事情(無理だろ、常識的に考えて)で通常にした。”増し”ともやしの存在感から二郎系を意識したのかと思いきや海苔、メンマとナルトで中華そば感を出し、しかし紅生姜で豚骨感も出していく闇鍋状態で、そもそもラーメンではなく丼。ラーメンライスの麺抜きと思えば別に問題なく食べられるだろ…という事前の予想は普通に裏切られた。タレが思った以上に豚骨醤油ラーメンのタレなのである。それもスーパーで売ってるチルドラーメンのスープみたいな。普通ああいうのは湯で薄めて用いるが、あの原液が米の上にかかっているのである。合うか? 合うか? 合わねーよ! ラーメンスープの原液なのでほとんど油をまぶしている感じであり、そこにチキンカツまで乗っている。一度胃に収めたものが食道までせり上がってくる感覚を久しぶりに味わった。泣きました、私は慢性の逆流性食道炎です。とはいえ時にはこのくらい遊び心があってこそのかつやである。こんなものを企画した人間とハンコ押した人間のツラを拝んでみたい。2022年の『カツ煮冷やしそば』に勝るとも劣らぬ狂気のメニューだった。
■2023/08/18 ネギねぎラー油のロースカツ丼(梅:759円、竹:924円)
2023/08/21でかつやは25周年を迎えたそうで、事実上の25周年記念メニューがこのネギねぎラー油のロースカツ丼だった。7月の悪夢が嘘のようにうまい。2種類のネギのそれぞれに異なる食感と香り、そしてラー油タレがロースカツに絡んでいい意味で刺激的な変わり種の美味になっていた。カツ自体にもだし醤油タレ(かつやのタレカツの味)で味付けされており、とんかつソースでこってりいただくのとは異なる新鮮な味わいがある。さらに白飯の上に敷かれた鰹節で旨味が追い討ちされる。う~んイノシン酸! これも恒常メニュー化してほしい逸品だった。これでポン酢だと米との相性が今ひとつになるところだし醤油とラー油なのがすごくいい。7月の悪夢からの反動でなおさら素晴らしいものと感じたのかもしれないが。ところで白髪ネギと青ネギ、どちらがねぎでネギなのだろうか。
■2023/09/15 秋の海鮮フライ定食(979円)
秋の恒例、牡蠣と海老の海鮮フライ定食。これが登場すると秋の訪れを実感する。しかし去年から値上げすると同時に仕様変更があった。牡蠣と海老の数は変わらずイカフライが増えたのである。正直去年はかつやにしては物足りない量(至って普通の常識的な食事)だった。やはりかつやとしても思うところがあったのだろうか。2023はかつやらしいパンチのあるボリュームだった。イカフライがまた肉厚でやわらかでうめーんだ。
■2023/10/06 牛バラ焼きとロースカツの合い盛り(丼:869円、定食:979円)
これもかつやらしい甘めのタレで炒めた肉とカツのコンボ。ロースカツと牛カルビなので脂と脂で非常にボリューミーだが、大ぶりな玉ねぎの甘みでいい具合に緩和されてとてもうまい。この写真は牛肉でロースカツが隠れて(牛肉でロースカツが隠れる、これを幸福という)いて真のボリュームがわからないが、できればロースカツは小さい方がいいのだが……まあそこはかつやなのでこちらが胃袋を広げて対応していくまでのこと。他のフェアメニューがイカれているため、これのボリュームは至極まっとうな程度である。しかし豚カルビとチキンカツを6月に、牛カルビと豚ロースカツを10月にというのも容赦がない。鶏→豚→牛の価格序列を考えれば鶏と牛を組み合わせてもいい気がするのだが。チャームポイントはししとう。アニメ美少女キャラの謎髪飾りのようなワンポイントで、茶色いとは言わせないぞと自己主張している。茶色いが。
■2023/10/23 麻婆チキンカツ丼(梅:759円、竹:924円)
喫食失敗。関東ローカルだったらしく、近所の店舗で取り扱いがなかった。ぐやじい。店舗限定ってわけもなく哀しくなりません?
■2023/10/27 天津飯チキンカツ(丼:759円、定食:869円)
かつやフェアメニューはいつもタレの類が多すぎるが、今回はちょうどいい量だった。というのも卵が非常に分厚く巨大で、チキンカツも巨大なのでちょうどいい量になってしまうのだ。そのタレは以前の五目うま煮と見た目が似通っているものの味付けは異なっており、甘酢餡である。酸味のおかげで比較的食べやすい……と思いきや見ての通り野菜がない。グリーンピースしかない。付け合せのキャベツすらない。卵何個分なのかにわかに判断できない巨大な卵焼きとそれに隠されたいつもの大型チキンカツのおかげで動物性タンパク質を食っているという実感がものすごい。せめて上にネギでも載せてくれればいいものの、ご覧の通りのカニカマ、タンパク質である。タンパク質にタンパク質を被せてタンパク質をトッピングしたものと書くとなかなか恐ろしい。決してまずいわけではないのだが、あまりのタンパク質っぷりに食事後半には胃の内容物が食道まで逆流してきた。
■2023/11/17 タレカツ(丼:869円、定食:979円)
茶色すぎるだろ。『タレカツ』というシンプルなネーミングから繰り出される揚げ物の山、山。右からヒレカツ、エビフライ(2本)、鶏ささみカツ(2枚)である。せめてささみは一枚にしないか? 五目うま煮の時といいささみは2枚じゃなきゃ駄目なのか? 笹瀬川佐々美か? そんな感じでちっともリトルではなく人の胃袋をバスターしてくるタレカツ定食だが、だし醤油系の味付けが真っ当に美味しいので困る。幸い千切りキャベツの山があるし、3種のうちひとつが軽いエビフライであることも奏功し、この量でもそこまで苦ではない。でもこれ、長物が4つだし、丼にしたら平野レミ世界観になる。ちなみにこの定食は恒常メニューの海老、ヒレ、メンチカツ定食と同価格である。メンチからささみにサイズアップしてタレまでついて同価格、やっぱりフェアメニューの価格設定はバグっている気がする。
■2023/12/13 味噌チキンカツ(丼:759円、定食:869円)
1年を締めくくるかつや2023最後のフェアメニューは、茶色通り越して…………黒い! 味噌ダレに揚げ物が沈み、時間が経つにつれ衣がどんどん味噌ダレを吸って膨らむ。チキンカツはいつもの一枚ではなく、一口大(それにしてはデカいが)に切ったものをそれぞれ揚げている。そして一見すると区別がつかないが、一番手前の2つは鶏つくねと説明されている。だがこれの正体は3月の『鶏だんごとチキンカツの合い盛り』に入っていたものと同じである。つくねとだんごで表記が変えられているが、いずれも等しく鶏ひき肉に軟骨を混ぜて衣をつけて揚げたものである。違いはひとつ。12月のものは、半分に切ってから味噌ダレに沈めて提供されているのだ。おかげで食べにくさが解消されており、サクサクすぎて硬い衣で口の中を切ることもない。ただ、味は、濃い。普段と違うチキンカツと過去品の流用となると、何か在庫処分的な内部事情を感じるが、なんであれ美味しくいただくのが我らかつや者である。
以上、かつや2023フェアメニューのほぼ全品実食レポを記した。1ヶ月に1回以上かつやに通う生活をしていたことになる。たびたびかつやに通うとオペレーションが見えてくることもあり、合い盛りの場合は合い盛り定1丁と呼ばれていたり、フェアメニューは昼時間の提供数に制限があるものの14時でリセットされるため13:55分に入店すると品切れを告げられがち、かつ後から隣に座った客の注文は通って悔しい思いをするなどの気づきを得た。
今年も『カツ煮冷やしそば(2022/09/02)』に匹敵する狂気である『とんこつチキンカツ丼』が登場したことを嬉しく思う。我々かつや者はね、うまくてボリューム満点のものだけじゃなくてね、たまには誰がどうみても変で食べてみてもやっぱり変なフェアメニューをね、むしろそれこそをね、楽しみにしてるようなところがあるんですわ。
■Tier表
S:ふわたま白カツ丼、 タレカツとうま煮の合い盛り、ネギねぎラー油のロースカツ丼
A:牛すき焼きとチキンカツの合い盛り、豚カルビ焼肉とチキンカツの合い盛り、秋の海鮮フライ定食、牛バラ焼きとロースカツの合い盛り、タレカツ
B:鶏だんごとチキンカツの合い盛り、天津飯チキンカツ、味噌チキンカツ
C:デミチーズハンバーグカツカレー、かつやの海苔弁
D:とんこつチキンカツ丼
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