Superman:Earth Oneがめっぽう面白かったので記す。
- 作者: J・マイケル・ストラジンスキー,シェーン・デイビス,高木亮
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2013/03/23
- メディア: 単行本
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ComiXologyのセールで500円くらいで買った。
最近アメコミというものを読み始めたので、お約束や込み入った設定には疎い。DCコミックでは最近"THE NEW 52!"という新シリーズが始まり、全部の世界観が一旦リセットされたのだとか。しかし実際ニュー52シリーズを読んでみると、過去の設定や長大な(バットマンやフラッシュなら今年で75周年!)連載を踏まえたストーリーであることに変わりはなかった。
どうもニュー52シリーズでは、5年前にヒーローたちが活動を開始したことになっているらしい。つまりその5年間で様々な事件が起こっており、様々な事件とはすなわち、過去設定や超長期連載のエッセンスだ。「フラッシュ:新たなる挑戦」でのキャプテン・コールドのように。
フラッシュ:新たなる挑戦(THE NEW 52! ) (DC)
そうじゃあない。僕らみたいなド新規の読者は、ヒーローや悪役がオリジンから語り直されるのが見たいんだ。そうじゃなきゃついていけないんだし。
そんな僕らに優しいのが"Earth One"シリーズなのだ。
本作"Superman:Earth One"の主人公クラーク・ケントは、就職活動中の若者である。
スモールヴィル短大を卒業し大都会メトロポリスへやって来た青年。だが彼はただの田舎者ではない。すさまじい身体能力と数々の特殊能力を持つクリプトン星の遺児である。そんな彼が職探しをすれば引く手あまた。スポーツ選手でも、研究者でも、何にでもなれる。だがどんな仕事も身が入らない。生まれた時から己の能力を隠し続けてきたクラークだが、彼の中には「これは本当の自分ではない」という思いがくすぶり続けていたのだ。
スーパーマンは自分探しをするものとはよく聞くが、それにしたって現代的だ。そしてなんだかティーンエイジャーっぽい。根拠のない全能感に酔って周りを見下すティーンエイジャーはその妄想を具現化した存在に共感する。誰もが通り過ぎる思春期の悩みを受け止める器としてのスーパーヒーロー像は、とても好みだ。
そんな彼が、自らの出自を正しく知り、世界の危機に際しておなじみのコスチュームを身にまとう。その色、エンブレム、顔を隠さないこと、お約束の設定一つ一つに至るまで意味付けと再解釈を経て読者の前へ提示するスタイルは現代と、初読者への意識を感じさせる。
さらに、彼にヒーローとしての自覚を与えるのが、カメラマンとしてのジミー・オルセンであるところがまたいい。戦いの中で、クラークは己の使命のためなら命も惜しまない彼のジャーナリスト魂に触れる。亡き父ジョナサン・ケントのかくあれかしという言葉と、今を必死で生きる人々の姿が、迷えるクラークに"SUPERMAN"としての道を示すのである。
"生きろ、クラーク。己の魂に従え。お前に何ができるのか、世界に見せつけてやれ。"
"飛べ、クラーク……"
"飛べ……"
壮絶な戦いの中で回想される亡き父の言葉✌('ω')✌最高~!
そして彼は眼鏡を――普通の男を装うための”仮面”を――かけてデイリー・プラネット社の一員となる。世界最初のスーパーヒーローは、あまたのマスクドヒーローたちが真の姿を隠すために仮面をかぶるのとは対照的に、世を忍ぶ仮面である眼鏡を外し、服を脱ぎ捨ててヒーローになる。押し込められていた本当の自分が解放される瞬間の快楽と真の全能感は、きっと多くの読者の共感と感動を喚ぶことだろう。
このSuperman:Earth One、幸いにして好評だったらしく、本国ではVol.3まで出版されている。Vol.2までは昨日読んだ。これもまた、ヒーローをなかなか甘やかさないハードな結末が待ち受けている。Vol.1巻末のDAILY PLANET紙見出しと、Bob DylanのIt's Alright, Ma(I'm Only Bleeding)の歌詞を今一度見直してから再読したい。
ところでこのスーパーマンが活動している"Earth-1"には、バットマンとティーン・タイタンズの面々が同じく活動しており、いずれも単行本が一冊発行されている。Batman: Earth OneはVol.2が5月に出る。さらに、今年中にワンダーウーマンの刊行も開始されるとか。(当初2014年開始予定だったものが2015年に延期になったらしい。)
DCコミックス公式のEarth-1紹介がこちら。
THE MAP OF THE MULTIVERSE | DC Comics
ニュー52の舞台であるEARTH-0とわりあい近場にあるらしい。
悪いとは言わんが52個も世界があるの、本当に頭がおかしくてすごいし、こんなん全部追いつける人が世界にどれくらいいるんだろう。
さておき、一番入りやすいのがこのEarth Oneシリーズなのは間違いなさそうだし、せっせと追いかけてみようと思う。物語の捻りの入れ方はSuperman:Earth One Vol.2の方が冴えていていいので、邦訳も出てほしいところ。なんでもVol.3ではレックス・ルーサーもゾッド将軍も登場するらしいぞ。
それにしても、一作読んだら芋づる式に読むべき作品が出てくるアメコミ沼、思った以上に深い。(クラーク・ケントの変な笑顔も本作の魅力の一つだ)