41 - 在外オタクワーク環境について

 インドア派のオタクなので、「家に引きこもっていてはいけない……!」と危機感を覚えても、向かう先は映画館か喫茶店かファミレスか、ないし乗ってる間は事実上インドアみたいなオートバイでのツーリングである。
 そして自宅にいると、ソーシャルゲームスマホゲーム、アプリゲームやソーシャルゲームなど、隙間時間を食いつぶす様々なものの誘惑があり、パソコンを使っての作業や書籍・漫画を読むなどの在宅オタクワークが全く捗らない。もちろん、彼女にはなんの罪もなく、悪いのは私である。
 かくして、見たい映画がなかったり雨が降っていてオートバイに乗りたくない時は、近場の喫茶店やファミレスに長逗留する不審者にならざるを得ない。
 そんな生活をしていると、各店舗の特色や、やることに対する向き不向きが見えてくる。
 よって、備忘と、ブログを放置し続ける罪悪感への償い行動として、各店舗について思うところを記録しておく。
 私が主に利用する店舗は、以下の四つ。順を追ってまとめていく。
サイゼリヤ
・ジョイフル
デニー
コメダ珈琲

  



1.サイゼリヤ


 みんなの友達サイゼリヤ。ここに来るたび、学生時代の異様に金がなかった一人暮らし時代を思い出す。
 もっとも、特に学費に困っていたなどの深刻な事情ではない。大学生の独居にどの程度の費用がかかるのか、私も両親も理解しておらず、今思い返しても明らかに少ない額の仕送りで生活していたことが原因である。まともなフライパンや鍋を買う金がないため100均のもので済ませ、どうにか自炊で乗り切ろうと試みるも困窮して米が買えなくなる。致し方なく100円ローソンの食パンを主食とし、100円のBOOKOFF古本を唯一の娯楽とし、当時激安だった松屋牛めしサイゼリヤのミラノ風ドリアをたまの贅沢として食べていた。エネルギーを使わないように休日はなるべく部屋で倒れていた。そもそも立ち上がることが億劫だった。そんな状態と両親との関係性の歪みから、もう少しお金をくださいと言い出すことも、アルバイトに出ることもできなかった。今思えばうつ病に片足を突っ込んでいたような気もする。常に付きまとう全身の倦怠感から学業に身も入らず留年。当時の体重は52kgだった。身長180cmの男であることを思えば病的である。余談だが、あの頃観ていた深夜アニメには今も強い思い入れがある。
 話が逸れたが、サイゼリヤ
 思い出を惹起されるミラノ風ドリアは定期的に食べたくなるが、在外オタクワーク環境としては、いまひとつだ。
 サイゼリヤはひとりの客を四人がけのテーブルには通さない。隅っこか、明らかに隔離しているような二人掛けのテーブルが主である。これが結構狭く、B5ノートPCを置くともう隣にコーヒーカップが置けない。
 フリーWi-Fiもない。電源もない。同じ刻みベーコンがありとあらゆる料理に登場するようなコストカットに余念がない店であり、今後も整備されることはないだろう。
そして最近、禁煙化を推し進めている。表に灰皿すら置かない店舗が増えた。喫煙者としては居づらい環境だ。
 しかし、ドリンクバーは安い。食べ物をなにか注文すれば、税込み190円である。最近は混ぜる遊びをMocktailと称して公式で推奨し始めたこともあり、人目をはばからずにドリンクバーを適当に混ぜ、失われた思春期に思いを馳せることもできる。とうの昔に通り過ぎてしまったろくでもない人生の航跡が、サイゼリヤにはある。
つまるところ、電源とスペースとネットワークを使わない作業であれば、サイゼリヤほど優れた場所はない。積み上がったKindle本を処理するときや、ろくでもないセンチメンタルに浸りたくなったとき、サイゼリヤはかつてと同じく私に優しい。ありがとうサイゼリヤ。結婚するならあなたのような人がいい。

 


2.ジョイフル


 喜びあふれるジョイフル。なんといっても税込み538円からラインナップされる定食が最高だ。一汁三菜を箸で食べる喜びは他では代え難く、皿に乗ったライスばかりのファミレスとは一線を画している。
 ドリンクバーは、通常の食べ物とのセット価格だと税込み214円だが、来店ごとにもらえる割引券(ジョイカフェチケット)を使うと税込み171円となり、サイゼリヤを上回るコストパフォーマンスを発揮する。種類も意外と多い。なぜかコーヒーはブレンド豆と深煎り豆の二種類ある。コーラやオレンジジュースなどの基本も外さない。カップはガラスであり、安全とコストカットのためかプラスチック化したサイゼリヤよりドリンクバーとしての喜びが強い。加えて抹茶ラテや黒豆茶、梅昆布茶などの謎めいたラインナップもあり、これが他にない独特の魅力だ。特に梅昆布茶が好きだ。年に一回くらい行くお高めのソープで休憩時間に梅昆布茶が出てくるから。一体なぜなんだ。
 在外オタクワーク環境としては、最高の一言である。
 まずSSIDとPassだけで使えるWi-Fiがある。一度ログインすれば時間ごとの再認証などは不要であり、メールアドレス・SNSアカウントの登録も求められない。
席は限られるが、電源も使える。コンセントは壁やソファの足元に配置されており、あるにはあるけど使いにくい、ということもない。
 喫煙席もある。このご時世に分煙も適当であり、エリアは区切られているが扉で仕切られているなどではない。ちなみに、ジョイフル元社長の穴見陽一氏は現在衆議院議員として活動しているが、受動喫煙対策を議論する衆議院厚生労働委員会参考人招致された肺がん患者に「いい加減にしろ!」などとやじを飛ばして話題になったこともある、最悪な類の喫煙者である。ジョイフルの分煙・禁煙化への動きの遅さは彼の影響力によるものなのかもしれない。この一件に際し、ジョイフルはまず分煙化、ゆくゆくは全面禁煙化を行うとコメントしている。分煙化すらろくに行われていない現状を鑑みるに、もうしばらくは、喫煙者に忖度した店舗であり続けるのだろう。サンキュー偉くて最悪な喫煙者。ジョイフルだぜ。
 喫わない人にはわからないことだが、喫煙席があると、家族連れが近づかないという圧倒的な利点がある。独り身としてはジョイがフルになってしまう。
 すなわち、PCを使って何かするときはジョイフルが第一選択となる。今、この文書を作成しているのもジョイフルの喫煙席である。しかし問題は、ACアダプタを忘れてきたことである。残りバッテリは2時間11分。

 


3.デニー


 セブン&アイグループの地味な足引っ張り役、デニーズ。最近は不採算店舗を200店閉めた、郊外型カフェ業態への転向など、景気が悪い報道が続いている。百貨店や総合スーパー事業に比べるとマシらしい。
 そんなデニーズは、かつてはホットコーヒーのおかわりのみと古典的なファミレス形態を貫いていたが、最近テコ入れがなされてドリンクバーが導入されつつある。このドリンクバーがすごい。なんと公証50種類である。そのキモは、タッチパネルで材料を選択することで、予め色々混ざったドリンクを作れるシステムである。カルピスとグレープとソーダを選択するとカルピスソーダグレープになって機械から出てくるのである。ちょっとしたアハ体験だ。
 加えて、デニーズのドリンクバーにもコーヒーが二種類ある。一方はファミレスにありがちな普通のコーヒー。そしてもう一方は、あのセブンカフェである。セブン-イレブンの店頭にあるものと全く同じものが置かれているのだ。
 価格は少し高く、食べ物とのセット価格で税込み279円。だがセブン-イレブンのコーヒーが無限に飲めるとなると話は別である。お前はセブン-イレブンのコーヒーを無限に飲んだことがあるか?
 こうして他にない価値を創出しているデニーズ。電源はないがフリーWi-Fiはある。これもセブン-イレブン規格の7-SPOTである。通常は登録が必要で60min*3/dayという制限があるが、端末にセブン-イレブンアプリを入れて会員登録を済ませておくと制限が外れる。
 しかし、こうして在外オタクワーク環境として及第点になったデニーズだが、7Pay関連で一気に使う気が失せてしまった。nanacoと繋げていなくて本当によかった。ファミレス全般が不振なのかいつ行っても空いていて、四人がけボックス席を一人で占拠できていたので重宝していたのに。
 喫煙に関しても、2020年ごろを目処に全面禁煙化すると発表されている。「喫煙専用室」と書かれ、いかにも法令遵守して最近設置しましたよという喫煙室がある店舗についても、方針を転換。今後は撤去して全面禁煙になるらしい。(健康増進法の改正案では「新規に開設する店舗は原則屋内禁煙、喫煙専用の部屋を設けること」と書かれているため、わざわざ喫煙室ではなく「喫煙専用室」という表記を採用したと思われる)
今後はどうしても身体が無限セブンカフェを求めた時のみの利用になりそう。

 


4.コメダ珈琲


 たまのコメダ珈琲は人生を豊かにする。
 高い。高いので、コメダ珈琲に行くという強い目的意識が必要である。
 フリーWi-Fiが一応あるものの、時間ごとの認証を求められるタイプでストレスが貯まり、店舗内の電波もあまり行き届いていない。
 電源は新しい店舗には設置されているが、私の居住地は広域名古屋圏に属しコメダの進出も早かったためか、よく使う店舗には設置されていない。
 それでも、一番良く使うのはコメダだ。
 なぜかわからないが、コメダには人間模様がある。先日は隣の席で「妻ががんで子宮を全摘した」という話が繰り広げられていた。その前は店舗備え付けの雑誌のクロスワードパズルをせっせと埋める40-70程度の母娘に遭遇した。怪しげな保険や商材の商談もよく目にする。そんな地獄の煮こごりのような環境で、学生たちは教科書とノートを広げて勉強に精を出し、メロンソーダを飲みながら他愛もない恋愛談義に花を咲かせている。老人はコーヒーを「コーシー」と発音して注文する。新聞を端から端まで読む定年後の男の横で、若い女性が資格試験のテキストを顔を埋めんばかりに読み込んでいる。コメダの何が人々をそうさせるのか。とにかくコメダとはそういう場所である。後発の郊外型カフェではこうはいかない。
 エリアを区切るだけの適当な分煙がなされているコメダも、新規店舗は全面禁煙になるという。それでも私はコメダ珈琲に通うのだろう。そこにみそカツパン(旧名:みそカツサンド。60円値上げしパセリが上に載らなくなった)がある限り。

 

 


以上