05 - セックスと嘘とデジタルバーサタイルディスク

 思えばセックスとのファースト・コンタクトが007である人は多いのではないだろうか。ジェイムズ・ボンドはこの世広しといえども数少ない公共性のあるセックス・マシーンだし、TVで007が放送されればすなわちセックスだ。少年期、ピアース・ブロスナン演じるボンドと美女とのロマンスを見ながら、大人の世界への空想を広げてしまったことをよく覚えている。今は彼のポジションにロバート・ダウニー・Jr演じるトニー・スタークが座っているのだろうか。

 しかし映画のセックスに"力"を感じる機会は、お茶の間やシネコンよりもミニシアターだ。サブカルセックスインディー映画だ。あの無遠慮に、べつにセックスを露骨に見せなくてもいいだろというシチュエーションで敢えて展開されるセックスを、狭い映画館でクソみたいなサブカル男、サブカル女と並んで観る喜びはなかなか他で味わえるものではない。頭の中で「う~んこれぞ表現!✌('ω')✌最高~!」と「つまんねえ…ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー観たい…」の二大勢力が拮抗する。

 正直申し上げて、互いのことを全く知らない男女が行儀よく座って特にやましい気持ちはなく他人のセックスを「芸術!」「芸術!」と無言で示し合わせながら眺める空間は明らかに気が狂っている。

 

 さておき、ここ五年くらいで印象に残っているサブカルセックスインディー映画を紹介してみようと思う。インディペンデントの定義はよくわからん。

 いずれも傑作です。*1

 

スプリング・フィーバー [DVD]

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 第62回カンヌ国際映画祭脚本賞。ホモがホモを押し倒してコンドームの袋を口で「ピッ…」と切るシーンや、シャワールームで全裸のホモが全裸のホモを壁ドンして事に及ぶシーンと窓の向こうの寂れた南京市街が最高。都市の同調圧力に負けずに愛を貫くホモは最高。

 

  神社の裏手にお祭の時だけ使う道具を保管している倉庫があるの、たぶん全国共通の風景だと思うんだけど、その畳の上で繰り広げられる若い男女の無軌道なセックスが最高。青年はDV親父の影に怯えながらアブノーマルセックスをしたがったりする。最高。原作はMARUTA先生か鶴田文学のようで芥川賞だ。芥川賞は最高。

 

  ポリオで首から下が動かない男がセックス・ボランティアの手を借りて脱童貞したりナニしたりする話。最高でしかない。機械に繋がれて生き永らえている男がセックス・ボランティアの女に対して執着する異様に恐怖を覚えた。究極のヤラせてやったら彼氏ヅラだ。最高でしかない。原作は鳴子ハナハルではなく、実話。現実は最高。

 

17歳 [DVD]

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  フランソワ・オゾンが描く少女売春。少女売春は最高。友達の友達くらいの男相手にあっさり処女を失うオープニングから美しく愚かしい放課後援交ライフへの移行があまりにも鮮やかで目を奪われる。なぜ少女たちはいくばくのお金と引き換えに見ず知らずの男とセックスするのか、文明に共通する問いへの一つの答えがここにある。

 

空気人形 [DVD]

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  ダッチワイフが主人の不在時に動いてしゃべり、「私は性欲処理の道具なのね…」と嘆く。誰もが思い描いたトイ・ストーリーR18版だ!ご主人様以外の男性に恋をしてしまうが、夜になったらやっぱり人形に戻ってセックスご奉仕!っらぃょ…という映画。最高でしかない。

 

 以上、最近のサブカルセックスインディー映画*2の話をした。

 こういうのほんとやめてえ。

*1:いわゆるサブカルが嫌悪される理由は理解できるからコケにするような書き方をしていますが、正直申し上げていい作品ばかりだと思います。

*2:この手の映画なら日本春歌考が最高峰じゃあないのか。よくわからん。