35 - 実録:不倫がはじまる時 ツバメさん(28歳・仮名) [前編]

『実録:不倫がはじまる時 ツバメさん(28歳・仮名) [前編] 同級生との再会、そして……』

週間月宿女性フィフス 2018年3月第1週号(ゲッシュク・ガゼット増刊)

 芸能界でも多くの不倫が報じられる昨今。身近なところでも話を聞いて驚きますよね。今回は3回連載で、不倫をしていた当事者の方にお話を伺いました。第1回は、月宿町在住のツバメさん(28歳・仮名)。都心の一等地に広大な敷地を持つ新興校・G学園の卒業生である彼女は、いかにも清楚で生真面目な佇まい。記者の私見ですが、不倫に走る人妻とは真逆の雰囲気を持つ女性でした。

 


繰り返される夫の暴力『風俗で稼げ』


 ――こんにちは。まずは自己紹介からお願いします。

ツバメ(以下T):はい。ミヤマ・ツバメと申します。よろしくお願いいたします。あの、ヘンなところないですか?

――いえ。もっとリラックスしてください。

T:すみません。私、あがり症で、学生時代も友達によくイジられてて……

――不倫のきっかけを教えていただけますか。昔の同級生だったと伺いましたが。

T:はい。当時私は、夫からの暴力に悩んでいました。夫とは大学時代に出会ったのですが、当時から金銭的に……女性関係にもだらしないところがある人で。付き合っているといっても、彼が私の部屋に居着いているような状態でした。他の女の人との噂も絶えなくて。
でも、結婚してほしいと言われた時は、嬉しかったです。これでマジメになってくれる、なんて思っていました。典型的な、ダメ男にハマる女ですよね、私。

――でも結婚後も相変わらずだった?

T:そうでもないですよ。長続きしなくても仕事はしていましたし、結婚してからは、他の女の人との噂はぱったりと途絶えました。ですが、その代わりに……。

――暴力を振るうようになった。

T:はい。昔から、冗談めかして私を叩いたり、私が口答えすると大声で怒鳴ったりする人でした。でも結婚して二年ほど経った頃から、突き飛ばされたり肩をグーで殴られることが増えてきました。決まって仕事やお金や、その……赤ちゃんの話をした時でした。

――咎められているように思ったんでしょう。

T:今にして思えば、私は、愛してくれているという実感がほしかったんです。将来のことを考えてくれてるっていう証じゃないですか。別に他人に自慢できる生活がしたいとか、贅沢したいとか、そういう気持ちじゃないんです。でも彼はそう思ってくれなくて……。

――夫からの暴力に違和感は持ちませんでしたか?

T:違和感ですか……? 当時は、男の人ってこういうものだ、私が我慢しなきゃいけないんだって思ってました。これが普通なんだ、DVとかそういうのじゃないんだって、自分に言い聞かせてました。

――当時、生活費はどちらが?

T:大半は私でした。夫はお酒と、競馬に凝るようになって……馬券代は自営業者の経費になるんだ、なんて言うんです。おかしいですよね。でもお金を渡さなければ夫は凄み、私を叩きました。お金を渡しても、私の内心にある不満を見抜いていたんでしょう。金のことばかり考えている、さもしい、卑しい、そんなにお金がほしいなら、風俗でもなんでもやって稼いでくればいいだろって。そんな時でした。彼に再会したのは。

 


私を旧姓で呼ぶ元同級生


T:彼の実家からのお歳暮のお返しに、デパートに行った帰り道でした。かっちりしたスーツの男性に声をかけられたんです。最初は何かのセールスかなって思ったんですけど、その人私を「ミヤマさん」って呼んだんです。私の旧姓です。それで思い出しました。

――それが不倫相手の?

T:はい。タカハシ(28歳・仮名)くんでした。中学生の頃の同級生だったんですけど、数回しか話したことがなくて。私、男の子が苦手だったんです。それで高校からは、女子校のG学園に進みました。

――タカハシさんとは、中学以来その時が初めて?

T:一度だけ、成人式の時に。その後の同窓会で連絡先を交換して……。実は私、彼に結婚式の招待状を送っていたんです。

――そんなに親しいという印象は受けませんが……

T:あの、私、友達が多いタイプではなくて……。夫が10人に招待状送れって言ったんですけど、どうしても9人しか当てがなかったんです。それで、彼のことを思い出して、送りました。断られちゃったんですけどね。

――再会した彼とは?

T:その時は喫茶店で少し話しました。式への招待のことで、私は少し気まずかったのですが……彼の方から「結婚式、行けなくてごめんね。仕事が忙しくて」と。そんなふうに謝ってくれるのが申し訳なくて、迷惑かけたのは私なのに。すると彼は、仕事が忙しかったのは嘘だ、って言うんです。

――ではどうして?

T:「ミヤマさんの花嫁姿を見るのは悔しいから」って言いました。その時はやめてよって誤魔化したんですけど……私、それがすごく嬉しくて。舞い上がっちゃったんです。

 


「男の人に口説かれたことってなかったんです」


――意外です。失礼ですが、とてもおきれいですから、慣れてらっしゃるんじゃないかと。

T:そんなことないです! むしろ真逆ですよ。私、男の人に口説かれたことってなかったんです。学生時代も剣道ばかりで、そういうこととは縁遠くて。カタいって思われがちなのを、なんとかしたかったんですけど……。

――では、旦那さんが?

T:初めての相手でした。だから私への扱いも、それが普通だって思い込んでました。でも、タカハシくんは違ったんです。

――それから何度かふたりで会われたんですか?

T:はい。昔の、がさつな中学生の彼しか知らなかったので、会うたび驚きの連続でした。最初の喫茶店でも、私が座る前に椅子を引いてくれました。脱いだコートを背中から着せてくれるとか、私の履いているものに合わせて、お座敷のお店やテーブルのお店を選んでくれたり……そういう何気ない優しさが、嬉しくて。彼にとっては、社交辞令の優しさだったんだと思います。でもそれは、夫との生活では決して得られないものでした。大事に扱われているという、愛されているという実感、でしょうか。

――それで一線を超えてしまった、と。

T:四度目か、五度目に会った時だったと思います。ホテルに誘ったのは私の方からでした。

 

 



『[中編]心がほしい私と、身体がほしい彼――甘い共犯関係』は月宿女性フィフス 2018年3月第2週号掲載予定
『[後編]上辺だけでも愛されたかった――夫に知られて、狂言妊娠、そして……』は月宿女性フィフス 2018年3月第3週号掲載予定

 

 

※本記事はフィクションです。また、㈱スクウェア・エニックスおよびゲームアプリ『スクールガールストライカーズ』とは一切関係ないファンテキストです。