74 - 危険物取扱者免状 再発行の備忘録

 かーなーりー厄介だったので経緯を記録しておくことにする。後に続くかもしれない人の助けとなれば幸いである。

 

■発端

 危険物取扱者免状は10年に一度写真の書換えが必要になるのだが、別にそれとは関係なく、免状を紛失した。免状、といってもカード1枚。そりゃ使わなければ失くすに決まっている。

 必要になったのは仕事の関係で、有機溶剤に関係する安全衛生的なサムシングの責任者的なものに指名され、研修を受けにいけと言われたから。危険物取扱者免状がこういう形で忘れた頃に必要になるのはよくあるケースだと聞く。

 思い返せば、そもそもこの資格を取得したのは大学院生の頃。自分の専攻では院試のための勉強内容と危険物取扱者甲種の勉強内容に重なる部分が多いため、院試を受けたら忘れないうちに甲種を取るのがパイセンからのオススメになっていた。時代背景としてはリーマン・ショックのために就活戦線が壊滅状態になっていて、どこも就職できなかったら資格を使ってガソリンスタンドで深夜バイトしようとか考えていた。なおリーマン・ショックの二年後には東日本大震災があり、私が就職活動した時期は後に新就職氷河期とか第二就職氷河期とか呼ばれるようになった。

 それはともかく、免状が必要になったのだが、自分の場合は失くしたわけではない。紛失、とは嘘であり、実家にはある。そして諸般の事情から実家には死んでも立ち入りたくない。従って、免状を紛失したことにして再発行(再交付)を試みた。ここからが難儀だった。

 

■再交付手順その①、電凸

 なにはともあれ、一般財団法人 消防試験研究センター 中央試験センターに電話した。東京都で免状の交付を受けたので、問い合わせ先は中央試験センターになる。

 すると、以下のような案内をされた。なお、自分は東京都で免状の交付を受けたが現在は地方在住であり、東京へ安易に足を運べる環境にはない。また、電話口でいくつかの個人情報を伝えることで、確かに危険物取扱者免状を取得していることを確認してもらえた。

  ・まず、手数料の納付書が必要である

  ・手数料の納付書を中央試験センターに申請してほしい

  ・その際、長形3号封筒の中に「納付書返送用の長形3号封筒」「メモ」を同封してほしい

  ・「メモ」には「氏名」「電話番号」「本籍」「申請区分(今回は再交付)」を記載してほしい

 さらに納付書の申請封筒の宛先は中央試験センターの電話を受けた免状担当者の名前にしてくれとのことだった。たぶん電話口での確認は電話を受けたその人相手でなければ無効なのだと思う。ここを怠ると下手すると誰やコイツ知らんわになりかねないってことっぽい。なんてこった。

 

■再交付手順その②、「メモ」

 で、問題なのはメモの「本籍」。本籍の住所って、多くの人の場合父親の実家の住所になると思うんだけど、そんなもん覚えているわけがない。こちとら両親の誕生日も現在の年齢も知らない筋金入りの親不孝、ナメないでもらいたい。

 だが、ここで住民票の写しを取得しないで済む裏技がある。運転免許証だ!

 運転免許証には2007年からICチップが搭載され、RFIDで記載情報が読み取れるようになっている。免許証本体に印刷のない本籍情報も、RFID経由でなら読み取れる。そして最近のスマホにはNFC規格のRFID機能が搭載されているので、適切なアプリをスマホにインストールすれば、役所で住民票の写しを取得しなくても、免許証から、本籍情報が読み取れる。すごいぞデジタルトランスフォーメーション。持っててよかったFeliCaポート搭載スマートフォン。サンキューGoogle Pixel!

 しかしここにひとつトラップがある。読み込みには、4桁*2の暗証番号が必要なのだ。言われるとなんとなーく思い出せるはずである。免許センターで4桁*2とかいう他と共通化しづらい番号を指定させられたこと、それを書いた紙切れを渡されたこと。多くの人は、どうせ使わんやろ~wとその紙を捨ててしまい、番号が思い出せなくなる。

 かくいう自分もそうで、最近銀行のアプリから休眠口座を電子化して活用しようと思った時に、本人確認のため免許証のRFIDで本人確認が必要になり、4桁*2の暗証番号の入力を複数回間違えてロックされて免許証が2007年以前の紙切れと化したことがある。これを解除するには免許センターに足を運ばなければならない。ロックを解除してもらうとやっぱり番号が書かれた紙切れを渡される。すごい虚無だった。デジタルトランスフォーメーションは全部クソ。

 かくしてGoogleと、失敗からの学習(人は失敗からしか学ばない)のおかげで有給を無駄に消費することなく「メモ」の作成に成功した。そして封筒に84円切手を貼ってメモと一緒に封筒に入れて84円切手を貼って投函する。

 

■再交付手順その③、手数料納付

 待つこと1週間ほどで「手数料納付書(再交付用)」が届いた。ちなみに東京、大阪、鳥取、広島以外は規定の納付書ではなく収入証紙または領収証紙でOKらしい。ここまでの労力って一体。

 しかし、この「手数料納付書」も曲物である。このご時世にPay-easyでの支払いが不可、つまり銀行の窓口でしか納付することができないのだ。さらにこの銀行にも制限があり、東京都の場合、メガバンクや地銀はOKだが信金等は不可でゆうちょ銀行は関東一都六県の店舗のみ。そしてご存知の通り、銀行の窓口は平日15時までしか開いていない。

 地方のつらみで、かつて国営のインフラだったゆうちょ銀行は至る所にあるが、銀行は意外と少ない。昼休みにサッと行ってパッと払って戻ってくるなど不可能である。さよなら有給、たぶん初恋だった。

 かくして、多大な犠牲を払い、手数料納付済書を入手することに成功した。

 

■再交付手順その④、再交付申請

 さて、ようやく再交付申請である。亡失・減失の場合は以下のものが必要になる。

 ・申請書

 ・身分証の写し

 ・証明写真(4.5cm*3.5cm)

 ・手数料納付済書

 ・返送用封筒

 申請書に免状番号の記入欄があるが、なぜか記入の必要はない。失くしてれば番号が書けるわけがないから当たり前なのだが、そもそも電凸した時も番号なしに個人情報で照合して免状取得の確認が取れてたし、そもそも要らないんじゃないのか。(電話口では免状番号を教えてもらえない。個人情報保護のためらしい)

 身分証の写しもなかなか虚無である。RFIDで記載情報をスマホに読み込んでデジタルトランスフォーメーションを感じた経験を経てから取る免許証のコピーは、味わい深い。

 証明写真はマイナンバーと同規格である。この機会にマイナンバーカードも申請しちゃおうかしらと思うも実行には移せていない。

 返送用封筒には、簡易書留の404円切手が必要である。

 いよいよ申請。404円切手を貼った封筒と証明写真を貼った申請書と写真入りの身分証と、(封筒に84円切手を貼ってメモと一緒に封筒に入れて84円切手を貼って投函して入手して銀行窓口で支払いをした)手数料納付済書を84円切手を貼った封筒に入れ、投函する。これが、1ヶ月前のことである。

 

■おわり

 そして1ヶ月後、無事再発行された免状が届いた。最初に動き始めてから手元に届くまで2ヶ月はかかっている。デジタルトランスフォーメーションすべきである。