22 - アメコミ映画の色味について雑感

 色って結構大事で、赤っぽいか青っぽいかで画面が語るものがまるで変わったりする。フルカラーコミックを念頭に置いてる(だろう)アメコミ映画では、全体の色調が結構大事にされている気がしたので、色々実例を探してみた。

 

 まず、何よりも「バットマン ビギンズ」(2005)。

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 たとえ夜のシーンであろうとも、必ず暖色がメインになっている。霧烟る摩天楼の街ゴッサムというイメージがあれば寒色にするだろうところ、これを観た時はだいぶ感動してしまった。冷たい氷のような戦いをするバットマンが温かい色味の中に立っているとは、リアル路線でありながらも、スーパーヒーローを信じている、という主張のように見える。内容もそんな感じだし。修行してたチベットは寒色メインだけどあのシーンにも炎がつきまとっているんだよな。

 

 これから一変するのが、続編「ダークナイト」(2008)。

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 すごいアス比最高。ともかく、とにかく寒色。これがジョーカーの狂気・恐怖、それに同一化していくバットマンという映画のストーリーが投影されていくのがすごいところだった。ヒーローを信じていたように見えた前作からは全く違う画面だし、この画面の力が数多くのフォロワーを産んでしまった、らしい。

 

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 お前ーーーーーーーーッ!!!!!

 

 良心回路を破壊してダークナイトに戻る。この色味の関係を踏まえると、冒頭のジョーカー登場カットでしれっと寒色と暖色が同居しているスゴみにも気付かされる。

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 前作では暖色だった世界が道化王子の登場で寒色の狂気に染まっていく、という読み方もできる。バケモノのような映画である。

 

 さて、近年のアメコミ映画のはやりを決定づけたといわれる「スパイダーマン」(2002)は、やはり暖色だった。

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 ガラスと鉄の寒色ではなくレンガっぽい茶色のビルがたくさんあるニューヨーク、というビジュアルがすごくよかった。というか、当時中学生か高校生だった私としては、タイムズスクエア以外のニューヨークがどうなっているかを、スパイダーマンのビジュアルで初めて知ったように思う。

 キービジュアルからして真っ黄色だし。

 

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 これは「スパイダーマン2」(2004)。やはり暖色である。ドクター・オクトパスと対決する夜のシーンでも、暖色の照明が印象的だった。「スパイダーマン3」(2007)ではサンドマンが出てきて画面を暖色に染めている。すべて、映画の明るい雰囲気をもり立てる役割を果たしている。これが冷たい色味だったり、あるいは色味に気を使わない画面だったら嫌だよなあ。

 

 これが「アメイジングスパイダーマン」(2012)ではこうなる。

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 作風は変わらず明るいが、画面は一転して寒色系に。なーんかサム・ライミ版から変えなければならないという意図だけが先行して、内容との結びつきまで至っていないような印象でした。

 

 「アメイジングスパイダーマン2」(2014)でも傾向は変わらず。

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 エレクトロが青基本だからといってこんなにも青いとは。ただ、アメイジング2ではグウェンとのラブロマンスシーンでこれみよがしに暖色だったりする。

 

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 とはいえ、ラストシーンでは、ビルの影から飛び出したスパイダーマンが寒色の呪縛から解き放たれて色彩豊かに躍動しており、大変によい。終わりよければすべてよし。

 

 では、最近のメインストリーム、マーベル・シネマティック・ユニバースはどうか。

 「アベンジャーズ」(2012)の、かの有名なアッセンブル(性的な意味ではない)シーンがこれ。

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 どちらかというと暖色だが、素の色味の方が尊重されているような。正直にいえばあんまりちゃんと観てないんだけど、色味は周囲の明るさに左右されてあまり統一されていなかったような記憶がある…。

 

 「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015)の方が色味としては考え方がはっきりしていた。

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 オープニングアクトは寒色。最後にロキの杖を取るシーンまでは暖色の方がいいように思うが、周辺が雪が積もって寒いから寒色。そして仲間同士が激突するハルクバスターのシーンでは、暗い内容にも関わらず、南アフリカの温かい地域だから暖色。

 つまり内容はどうでもいいのである。さすがだなてめえ。娯楽か。娯楽だ。

 

 一方、同じMCUでも「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016)はどうか。

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 IMAXで、フラットな色彩を、右も左もないチーム内対決で使うセンス。白っぽいけど決して寒色寄りではなく、ありのままの色なんだよなあ。

 

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 アイアンマンがリパルサーを撃つとまるで友情の絆が最後に一層の輝きを放つかのように寒色だった画面が暖色に(絶頂)。神か。リパルサー照射をキャップの盾が受け、寒色の画面の中心から太陽のように暖色の火花が散る印象的なカットもあった。しかもあれはスリットの向こう側から撮った画になっているんだよね。

 MCU、娯楽大作としてドンパチ賑やかな作品と、ちゃんと映画を撮ろうとしている作品の落差が結構大きくて、蓋を開けてみるまでどちらなのかわからないオモシロコンテンツになってきたなーと感じます。CAWSからは特に。

 

 ではでは、俺たちのザック・スナイダー監督、「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」(2016)はどうか!

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 寒色!!(これなんだよな、という顔)

 

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 暖色!!(そうそう、これでいいんだよ、という顔)

 

 で、ぬか喜びしているとこれが出てくる。

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 見たくない悪夢だけど、暖色!!!(絶望に打ちひしがれる顔)

 ありがとうザック・スナイダー、ありがとうDawn of Justice。

 

 せっかくなので最後に我が国も見ておく。

 お前は誰だ、俺の中の俺!「仮面ライダーアマゾンズ」(2016)だ!

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 う~んダークな色調。物語がやや露悪趣味だから、このくらい暗くてもいいかなって思います。あまりにもわざとらしいといえばそのとおりだし何も言えねえ。TV放送で叩かれないことを願うばかり。

 

 現行ライダー、「仮面ライダーゴースト」はどうか。

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 明るいし色がおもちゃっぽくはっきりしている。あんまり全体の色味どうこうではないところはアベンジャーズ路線ではある。正直中身云々でなしに朝からこのドぎつい色を見ると目が辛い。

 

 ライダーはともかく、急に色味が気になったのは、今年のE3で発表されたというスパイダーマンのゲームが、どうみてもサム・ライミ版の暖色だったからなんです。

youtu.be

 全体に暖色。明るく楽しいけどカッコいいスパイディアクションが楽しめるゲームだといいなあ。PS4買うまである。

 

 以上、昨今のアメコミ映画と色味について。PS4がほしい。