36 - 実録:不倫がはじまる時 ツバメさん(28歳・仮名)[中編]

『実録:不倫がはじまる時 ツバメさん(28歳・仮名)[中編] 心がほしい私と、身体がほしい彼――甘い共犯関係』
週刊月宿女性フィフス 2018年3月第2週号(ゲッシュク・ガゼット増刊)

 不倫をしていた当事者の方にお話を伺う3回連載の第2回。G学園の卒業生で、夫の暴力に悩んでいたツバメさん(28歳・仮名)は、街で偶然再会した中学時代の同級生、タカハシさんと逢瀬を重ね、ついに一線を超えてしまいます。許されざる関係はどこへ向かうのでしょう……。

[前編]はこちら

 


日曜日だけの恋人……「まるで普通の幸せな家庭みたいで」


――旦那さんとの性生活に不満があったのでしょうか。

ツバメ(以下T):……わかりません。でも、タカハシくんのセックスと夫のセックスは明らかに違いました。夫とする時、私はずっと我慢するんです。気持ちよさがないわけではないですが、決して、求めてするものではなくて。夫は、きっと私が自分とのセックスに慣れたと思っているのでしょうけど、私は夫が怒らないように、感じているように振る舞うことが上手くなっただけでした。

――それは不満、ではないですか?

T:そうかもしれません。でも、セックスってそういうものだと思っていたんです。触られることを喜ぶような仕草、要するに、あなたとのセックスが好きなんです、っていうポーズを示す、演舞みたいなものだと感じていました。でも……

――彼とのセックスは違った?

T:はい。

――どんなところが?

T:気持ちよかったんです。彼の手が私に触れて、私の手が彼に触れる。触ってはいけないところに触らせることがこんなにドキドキすることだなんて、知りませんでした。もっと触れてほしい、触れてくれる彼に触れたい、気持ちよくしてあげたいと思えました。気持ちいいと、声って本当に出るんですよ。初めて自分のあえぎ声を聴いた時、私、「幸せだ」って思ったんです。

――彼とは、その……どれくらいのペースで?

T:本当は毎日だってしたかったです。でも、バレたらいけないからって、月に1~2度、決まって日曜日でした。

――日曜ですか。そういうのは、平日のイメージがありました。

T:奥さんが……まだお子さんが小さくて、土曜日の夜から日曜日の夕方まで、いつもお子さんを連れて実家に帰っていたんです。それに私も、夫が土日に家を空けることが多くて。

――それもまた意外です。

T:競馬の……GI? っていうんですか? 大きいレースがあるからって言って、朝から競馬場に行ってしまうんです。

――なるほど。

T:それで、私も、昼間から彼に逢っていました。日曜日のお昼に腕を組んで歩いていると、まるで普通の幸せな家庭みたいで……。私、それがすごく嬉しかったんです。夫がいつも、私を1人にする日曜日に……。

 


「制服でしたい」拒めない私……もう戻れない


T:その年の7月から9月は、競馬の大きなレースがなかったんです。

――じゃあ、彼とも。

T:はい。でも連絡は取り続けていました。夫に見られてもいいように女友達の名前をつけて。でも、逢えなかった間に、彼の連絡は段々……その、露骨になっていって。普通の世間話だったものが、抱きたいとか、気持ちよさそうな声が早く聞きたいとか、もっと露骨な言葉が並ぶようになりました。見られたら終わりでした。でも私、やめてって言えなかったんです。

――どうしてですか?

T:彼に求められるのが嬉しかったから。今にして思えば、あの頃から、私は彼が私と同じものを求めているわけじゃないって、わかってたんです。でも嬉しくて、あんな気持ちは初めてだったから、私はスマホが通知を鳴らす度に飛びついて、彼じゃないとがっかりして……。

――戻れないと感じた出来事が、その頃にあったと伺いましたが。

T:はい。9月のあたま頃でした。月末に大きなレースがあって、夫は当たりもしない研究に夢中になっていました。そんなある日、彼からいつものように連絡があって……「制服でしたい」って書いてあったんです。学生時代の。

――中学の同級生でしたね。

T:でもさすがに、中学の制服は入らないよと応じたら、じゃあ高校の、と……。私、G学園の卒業生なんですけど、あそこの制服、可愛いって評判で。私も卒業したとき、なんだか勿体ない気がして、捨てずに取っておいたんです。結局、実家のクローゼットに入れっぱなしだったんですけど……。

――取りに帰ったんですか?

T:はい。母親に呼ばれたって、嘘ついて。夫は怒りました。私、両親に彼をちゃんと紹介していなかったんです。夫が嫌がったので。結婚してからも、私が実家の両親のことを仄めかすと、夫は怒りました。

――ちゃんとした男じゃない自分へのコンプレックスがあったのでしょう、旦那さんにも。

T:そうかもしれません。でも、私だってそんな夫をバカだと笑えません。だって私、不倫相手とそれを着てセックスするために、実家に高校時代の制服を取りに帰ったんですよ。もう10年近く着ていないのに。笑いますよね、バカな女だって。

――……いえ。

T:私、したくてしたくてたまらなかったんです。抱かれたかったんです。彼に。

 


三ヶ月ぶりの逢瀬……満たされてしまう心


――久し振りに逢った彼は?

T:顔を見た瞬間から、胸が高鳴ってしまって……ほとんど覚えていません。

――それで、ホテルへ?

T:はい。いつもより大きいバッグに制服を入れて、スカートがシワにならないといいなあ、なんて思いながら彼と腕を組んで、もう5回は使っていたホテルに入りました。

――制服は……その、着られましたか?

T:幸い、大丈夫でした(笑) でも、制服のスカートって、あんなに短いんですね。少し揺れたら見えてしまいそうで、自分がこんなものを着ていたのが信じられませんでした。

――彼の反応は?

T:あれの方もすごかったんですけど……彼、「可愛い」って言ってくれました。いつもは「綺麗だよ」なのに。それで、ああ、頑張って着てよかったって、思ってしまって。結局器用に、着たまましました。それで、私……その時に、気づかされてしまったことがあって。

――気づかされた?

T:私は高校時代の制服を着ていて、彼のものが入ってきて、自分の口から、自分じゃないような息が漏れて。馬鹿なことをしている自覚はありました。でも言われるがまま、されるがままの自分がすごく、気持ちよかった。私、彼にしがみついて「好き、好き、好き」ってうわ言みたいに言ってました。あの時、私の心は彼のものでした。満たされていて、生きてきた中で一番感じて……。入れられながら、ああ、私はこの人のことが好きなんだ、って気づいたんです。

でも、頭のどこかではわかっていたんです。

――わかっていた、とは?

T:私と彼が同じように満たされているわけではない、ということです。彼にとって、私はただの、バカな女でした。言われるがままに制服を着て、AV女優みたいにあえぐ、月に1回日曜日にセックスできる都合のいい女でした。私は、私の心が彼のものになったつもりでした。でも彼にとっては、私の身体が彼のものになっただけだったんです。きっと。

――そうでしょうか。

T:彼、「僕も好きだよ」とは言ってくれなかったんです。それでも、私はその共犯関係に夢中になりました。

 ――共犯?

T:私は心がほしいだけ。彼は身体がほしいだけ。それって、利害が一致した、共犯者みたいだと思いませんか?

 

 



35 - 実録:不倫がはじまる時 ツバメさん(28歳・仮名) [前編] - baby portable log

『[後編]上辺だけでも愛されたかった――夫に知られて、狂言妊娠、そして……』は週刊月宿女性フィフス 2018年3月第3週号掲載予定

 

 

※本記事はフィクションです。また、㈱スクウェア・エニックスおよびゲームアプリ『スクールガールストライカーズ』とは一切関係ないファンテキストです。