59 - 2020年に観た深夜ドラマ

 しょうもない深夜ドラマが好きで、手が空いた時や家事の間でよく観ている。しかし結構観たこと自体を忘れがちで、何を観たのか、何を見逃したかも思い出せないことが多い。せっかくの年末年始なので、まとめて残しておくことにした。アニメと被ると録画できないなどの悩みもあり……。ダブルチューナーでHDDがクソデカいレコーダーに買い換えるべきかもわからん。

 なお、ここでいう深夜ドラマは主に23時以降に放送される実写作品を指す。

 

■放送局(枠名)

・作品名

 

NHK(よるドラ)

・いいね!光源氏くん

 千葉雄大主演。かわいいなどと評されることが多い彼が光源氏を演じ、現代に暮らすOL(演・伊藤沙莉)の自宅に突然現れるラブコメディ。女の好きなものが好きな軟派でトボけた男に千葉雄大がベストマッチしていて、いちいち平安貴族ボケをかましたり感動すると詠んだりするテンプレが観ていて心地よかった。中盤で登場するキザ平安貴族・中将役の桐山漣も非常に良かった。「これは経費で落ちません!」に続き脇役の顔のいい男役が板についてきている。毎週の癒やしだった。

 

腐女子、うっかりゲイに告る。(再放送)

 ゲイの少年を好きになってしまったBL大好き腐女子の物語。軽そうなタイトルとは対象的に、若いゲイのリアルな悩みと、結果的にゲイを性的に消費しているともいえる腐女子文化の乖離が真正面から描かれる意欲作だった。「好きなんでしょ、ホモ」は忘れられないセリフになった。また、時折差し挟まれるゲイの目から見たBLへのツッコミが、キャラクターたちの誠実さによりコメディになっているのが良かった。

 

・彼女が成仏できない理由

 ミャンマーからやってきた漫画家志望の青年・エーミンが主人公。彼が借りた部屋の地縛霊の正体が実はエーミンが憧れる漫画家で、しかし連載はまだ続いている……というコメディのようなサスペンスのような物語だった。面白いのはミャンマー人である主人公・エーミンをを森崎ウィン(実際にミャンマー生まれ)が演じていること。設定と森崎ウィンのどちらが先に決まったのだろうか。NHK名古屋放送局制作であり、外国人が多い愛知の実際が反映されたと思しき描写も多く、印象深い作品だった。

 

・閻魔堂沙羅の推理奇譚

 毎回非業の死を遂げたゲストが閻魔大王の娘・沙羅(演・中条あやみ)の計らいで「死者復活謎解き推理ゲーム」を行い、自分を殺した相手を推理することで現世への蘇りを目指す物語。中条あやみに変な服を着せない闇の勢力の暗躍を感じる。悪くはないが、前後編になっていないエピソードでは尺不足感が強かった。それにしても良かったのは第5回のR-指定(Creepy Nuts)出演回だ。金に汚い小物のクズ役にR-指定がびっくりするほどハマっている。

 

■フジテレビ系列(カンテレドラマらぼ)

 BSフジで観ているため、地上波での初放送が2019年の作品も含まれる。

・時空探偵おゆう 大江戸科学捜査

 祖母の差し金で江戸時代にタイムスリップしたミステリマニアのOL・関口優佳が、江戸の殺人事件を現代の科学捜査で解決するミステリ。主人公が現代で証拠分析を依頼する受託分析会社の友人・宇田川聡史を甲斐翔真が演じている。「ココロがオドるな……」などのパロディセリフもあった。時代劇としてはいささかチープであり、受託分析の描写もちょっと雑だがそこは深夜ドラマの味である。

 

・名もなき復讐者 ZEGEN

 2020年の風俗業の悲哀……性犯罪、絶対に許せねえ!枠。川崎の風俗街を舞台に女衒、と呼ばれ本名過去一切不詳の男と病気の夫のため日本の風俗へ出稼ぎに来た中国人の女、その女が強制送還を逃れるために偽装結婚した病で余命幾ばくもない男の過酷な交流の物語。中国人風俗嬢の女を馬場ふみかが演じており、驚くことに中国語の会話シーンも多い。女衒の過去を巡る縦糸の話が強く、風俗に送り込まれる女たちの物語は比較的薄味だった。深夜ドラマらしいチンピラやサイコな男女が続々と登場する様子はなんだか青年誌の漫画を読んでいるようだった。

 

死亡フラグが立ちました!

 失敗する確率が90%の殺害手段でも繰り返すことで0%に漸近して必ず成功するというテーマで最後まで突っ走った。そりゃねーよと言いたくなるところ、塚地武雅演じる天才投資家(金持ちで女にメチャモテでケンカも強い)が物語を絶妙にコメディにするのでバランスが取れて成立している。なにせ最初の殺害手段は「バナナで足を滑らせて頭を打って死亡」である。バカミスが次第にシリアスへと変貌していく終盤への舵取りが上手かった。

 

・連続殺人鬼カエル男

 原作がメッチャ好き。そのせいかドラマの出来はいまひとつだな……という感想になった。薄汚れた絵面、美術は非常に優れているが、ドラマが主役の叫びに依存しすぎている。前田航基(まえだまえだ)演じる自閉症の少年のそれらしさが救いか。あと引き伸ばし感がひどい。

 

・そして、ユリコは一人になった

 逆らうものには不幸が訪れる「ユリコ様伝説」の残る元女子校の百合ヶ原高校。ユリコという名前の生徒は選ばれた一人しか存在できず、他のユリコは皆不自然な形で学校からいなくなる。そんな学校に入学した親友の矢坂百合子を守るため、ユリコ様伝説の真相を解き明かそうとする美少女探偵・嶋倉美月(演・玉城ティナ)が主人公である。百合、実写!強すぎるメイクで無理矢理女子高生にされた険しい絵面!とはいえ絵面に慣れてくると、誰が仕込んだ事件なのか解決編まで全くわからず一方的に振り回される。「百合」から来る固定観念まで利用した結末には舌を巻いた。惜しかったのは、描写の中で霊的な力がほぼ感じられず、人間以外が正解候補にならなかったことか。

 

■TBS系列(ドラマイズム)

・荒ぶる季節の乙女どもよ。(未見)

 TSUTAYAプレミアム独占配信をやめるかBSで放送するかしてくれ。

 

テレビ東京系列(ドラマホリック!、ドラマパラビ、木ドラ25、ドラマ24、真夜中ドラマ)

 BSで視聴しているので、地上波初放送が2019年の作品も含まれる。

・死役所

 松本まりか枠。松本まりかが映るたびに絶頂していたので内容はよく覚えていない。

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 ゼアイズサイコーオンリー(最高しかない)。全人類こういうお姉さん好きだろ。

 終盤に登場した新興宗教のサインと紅白歌合戦に出てきたGENERATIONSのサインがもろ被りしてて笑った。

 

・僕はどこから

 かつて親友同士だった小説家志望の主人公とヤクザの男が、金のために替え玉受験に加担したりする話。適当に書くのは物語がとっ散らかっていて短いセンテンスでの説明が難しいからで、そういうものは大体おもしろくない。主人公の特殊能力(他人の書いた文章を書き写すことで発動するメンタルトレース)が地味すぎるのが困りものか。

 

・ミリオンジョー

 人間嫌いの大人気漫画家が人知れず突然死。国民的人気を誇る彼の連載作品「ミリオンジョー」を完結させるべく、遺された最終回までの脚本ノートを元に編集がネーム、チーフアシスタントが作画となって奮闘する物語。バレるバレないのハラハラが最後まで途切れず面白かった。目の肥えたネットの読者や子供たちを失望させてはならないと鬼気迫る勢いでネームに打ち込む編集者・呉井総市役の北山宏光Kis-My-Ft2)が熱演だった。アンケートの結果が芳しくないので展開を一気に詰め込むとか、一枚絵の主人公は必ずカメラ目線にといった漫画ノウハウもリアリティを高めていた。

 

・来世ではちゃんとします

 セフレが6人いる性依存女子・大森桃江(演・内田理央)といずれ劣らぬ性的に駄目な同僚たちの生態を描くコメディ。こじらせた大人たちのしょうもない日常を面白おかしく描くものだが、時々ウッ!!ワカル!!!ってなってしまった(どぼぢで)。常に男好きする服を着て男好きする仕草を繰り出す内田理央は必見。

 

ゆるキャン△

 ロケ地の学校行ってきました。アニメともども地元に愛されていていいことである。しかし特になでしこの演技、仕草はここまで漫画にせんでもよくないかと思った。が、大垣の再現度はすごい。2.5次元というととんでも髪型とんでも衣装のイメージだが、こういう2.5次元もありという範を示した作品だった。

 

・コタキ兄弟と四苦八苦

 野木亜紀子脚本によるオリジナル深夜ドラマ。46歳独身無職・古舘寛治。42歳別居中無職・滝藤賢一。当代きっての実力派バイプレイヤーたちが演じるクズのおっさんの貫禄は圧倒的である。しかし彼らが「レンタルおやじ」を通じて出会う人々には少なからず現代の社会問題が投影されていて、しょうもない兄弟による単なるコメディには終わらせない意欲作だった。1話市川実日子、2話岸井ゆきのとゲストも豪華である。滝藤賢一演じる弟がセレブのホームパーティに呼ばれておもちゃにされる6話のしんどさが忘れられない。

 ちなみに、放送枠のドラマ24孤独のグルメを産んだ枠でもあり、去年のマイベスト深夜ドラマ「フルーツ宅配便」もこの枠だ。

 

・絶メシロード

 会社でも家庭でもうだつの上がらない男、須田民生(演・濱津孝之)の唯一の楽しみは、妻と娘が推しのライブに出かける週末、「誰も誘わない」「誰も巻き込まない」「予算はお小遣いの範囲内」の三原則を守って一泊二日の車中泊旅行に繰り出すこと。彼の楽しみは旅先で出会う「絶滅しそうな絶品メシ」、絶メシ。決まって個人経営の今にも潰れそうな店での、店主や常連客とのちょっと殺伐とした交流の物語である。

 実際地方へ旅に出てみると、特に名店というわけではなさそうな飲食店がロードサイドにぽつんとあるし、入ってみると地元の人しかいない。二度と訪れることはないし、潰れても自分が困るわけではないけど、やっぱり寂しい。そういう気持ちを思い出すドラマだった。

 

・どんぶり委員長

 声優・伊原六花が制服を着て主演するバカドラマ。育ちがいいのでどんぶりみたいなはしたないものは嫌いな委員長(演・伊原六花)が、同級生の料理上手な吉田くんの作るどんぶりに魅了されていく物語。出てくるどんぶりが毎回簡単かつ美味しそうで、すごくいい。ここにも前田航基がクラスのオタク役で出演していた。

 

 17作品を観て1作品見逃した。荒ぶる季節の乙女どもよ。が観たい…。

 あえてベストを3作選ぶなら、

 

腐女子、うっかりゲイに告る。

・コタキ兄弟と四苦八苦

・絶メシロード

 

 の3作か。若い演者をちゃんと使えていれば「そして、ユリコは一人になった」が年間ベスト級だった。