15 - アベンジャーズを見るたび思い出せ。

 事の起こりは先週の金曜日。私は地獄のような業務のため、とある地方都市を訪れていた。当日は移動のみで、業務は翌朝から。まったくもって、ビジネスホテルで過ごす夜ほどつまらないものはない。たまにビジネスホテルに泊まるのが好き~♡とか言ってるはてなセンスのクソ野郎どもは、全員超人ハルクにビダンビダンされればいい。お前月の八割をビジネスホテル軟禁生活しても同じこと言えんの?

 そう、アベンジャーズである。

 先週の金曜日、金曜ロードSHOW!枠で、アベンジャーズが晴れて地上波にて初放送された。私も、砂漠で小銭を見つけたような気持ちでテレビの前に座っていた。時刻は夜の8時40分ほど。視聴率を見込めるのだろう。金曜ロードショー、アベンジャーズ!アクション映画の中のアクション映画!という勢い込んだ予告が繰り返し流れていた。

 そこでふと、私は思い立ったのだ。

 これはアベンジャーズ観ながらハメンジャーズ*1するしかねえ、と。

 私がその地方都市を訪れるときは、いつも某巨大ビジネスホテルチェーンを利用し、定宿としていた。そのホテルはエレベータが1基しかなく、どんな客でも必ず、上ボタンを押して待つ間にフロントのほぼ真正面に立ち続ける構造を意図的に取っている。すなわち、デリヘル避けだ。

 だが、その日は定宿が運悪く満室だったため、いつもと違うホテルへ宿泊していた。ここならばイケる、試してみる価値はある、そう思った。かの自動車修理工もこう言っている。男は度胸!何でもためしてみるのさ、と。*2

 まずはGoogle検索だ。しかし時間がない。アベンジャーズが始まってしまう。アベンジャーズを観ながらでなければ何の意味もないのだ。致し方なく、「(街の名) デリヘル」で検索して一番上に出てきた番号に電話してみることにした。

 ダイヤル――おっ、どうみても携帯電話の番号。そうそう、こういうんだよな。地方の出張ってのはさ。数コールで電話が繋がった。だが私には時間がない。そしてこのホテルがデリヘルOKなのかどうかの下調べもしていない。なあに、向こうのほうが玄人だ。まずは訊いてみることにした。

「あのぉ~、(ビジネスホテルの名)って……」

 間髪入れずに返答。「はい大丈夫ですよ! 何号室でしょう?」

「えっと、(任意の数字)号室なんですけど……」

「はい、ただいまご案内しますね~」

 電話が切れた。この間わずか30秒。引き止める間もなかった。アベンジャーズ風に言うなら、ありえないほど高速である。その頃、液晶画面の向こうでは、コズミックキューブからのそりと現れたロキがクリント・バートンの精神を乗っ取っていた。

 しばし待つ。すると電話が鳴った。何事!? と思ったら社有の携帯電話だった。ナメてんのか。

 さらに待つこと10分ほど。ビジネスホテルの扉がノックされた。やってきた嬢について、深く語ることは控えようと思う。だがひとつ、語り落とすわけにはいかない重要なことがある。

 その日の嬢は、なぜかペッパー・ポッツに異様に似ていた。その頃、液晶画面の向こうでは、ロキ相手に苦戦するキャプテン・アメリカの救援に、あの男が颯爽と現れた。ペッパー・ポッツが嬢なら、私は何だ。私は、私は――

 

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 プレイは至って常識的なファッションヘルスのそれだった。途中、数カ月前に飲みに行ったとき、初めてのソープランド体験談をまんざらでもなさそうに、だが少し悲しげに語っていた(ハメておきながら何を偉そうに)高校時代の友人のことを思い出していた。そして、ボーイズラブ漫画の奇妙なフェラチオのことを考え、幼少期から老年期まで一途に添い遂げる文庫化もされた名作BL漫画があった気がするがタイトルが思い出せないなあ、などと首を傾げていた。無論、私はホモではないのでそんなことを考えていたら萎えた。ちょうど素股でイッときますか?というタイミングだったので、正直申し訳ないことをしたと思う。なんもかんもホモが悪い。

 もちろん、私のリトル・アイアンマンは嬢の口内に心地よいリパルサーレイを放ったし、アイアンマンとキャプテン・アメリカの連携でヘリキャリアは墜落を免れた。よく考えたら射精よりアベンジャーズの方が大事な気がしてきたので、延長や二回戦はせずに嬢には帰ってもらった。

 アベンジャーズしながらハメンジャーズという、機運だけを動機にした勃起のせいか、何だか釈然としない終わりだった。*3しかしこれだけははっきりしている。

 あの瞬間、私は確かにトニー・スタークだったのだ。


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