95 - 快楽天ビースト(ワニマガジン)価格推移の調査

 エロマンガ愛好家を震撼させる知らせが飛び込んできた。何もかもが値上げする昨今、成人向けコミック雑誌(以下、成コミ誌)にも値上げの波が押し寄せている。最近はコミックエグゼの価格が話題になったが、手頃な価格と手堅い実用性で多くの人に長く愛されてきたワニマガジン社主要誌も例外ではなかったようだ。

快楽天ビースト 2023年12月号 | ワニマガジン社

 あの快楽天ビーストも、2023/11/14売りの2023年12月号から1320円に値上げするのだという。驚く人も多いだろう。自分も驚いた。ビーストといえばワンコインで買えるもの、という固定観念があったためだ。そこで、「平綴じになって値上げしたけど、まさか四桁円…???」と困惑し、股間の陽物も西の空に沈んでしまう諸兄のために、過去5年の快楽天ビースト価格推移を調査したので報告する。

 ご覧の通り、ほんの5年前までワンコインだったものが、今や1320円。実に2.7倍の値上げである。

 より細かく値上げのタイミングを確認していくと、次のグラフのようになる。

 ご承知の通り、東京オリンピック開催に伴う成コミ誌粛正・コンビニエンスストアからの排除に対応するため、快楽天ビーストは平綴じ成人指定誌へのリニューアルを余儀なくされた。これが2019年8月号からの値上げである。当初は紙版のみに適用されていた値上げが二段階に分けて電子版にも適用され、2021年1月号の価格統一の際に併せて若干の値上げを行ったようだ(厳密には紙800円、電子版799円)。2020年からは新型コロナウイルス感染症の広がりに伴う緊急事態宣言や外出自粛等があり、コロナ対応のためのコスト増が10%の値上げの原因であろうと考えられる。ここまでは、卑小な消費者心理としては、受け入れられる価格差だったように思う。800円は実質500円だ。早稲田大学の竹村和久は、2000円に対する1980円の20円差が1970円と1950円の差よりも大きく感じる消費者心理を端点付近の敏感性、「心的モノサシ理論」により説明している。だから800円は実質500円…………500円!

 だが、この後の値上げが苛烈である。800円だったものが2023年7月号から990円に24%の値上げ、そして2023年12月号からは1320円へ33%の値上げ。露宇戦争に伴うエネルギーコスト増大とあらゆる領域でのインフレによるコスト増大をカバー仕切れなかったのだろう。

 990円までは自分も受け入れて購入しており、これも心的モノサシ理論による大台割れ効果に基づき価格が(辛うじて)購入障壁になっていなかったのだと考えられる。しかし1320円。1320円…… コミフロ、移行しちまおっかなァ…

 購入しておくといつでもバックナンバーを遡ることができ、何かのきっかけで突然過去五年分の快楽天を遡りたくなった時などに困ることがない。もっとも旅の恥はかき捨て、成コミ誌は読み捨てにしていくのが一般的なエロマンガとの付き合い方だろう。かくいう自分も、バックナンバーを遡ったことは数回しかない。そのうち1回は、突然快楽天におけるコンドーム使用率(セーファーセックスがポルノにどの程度浸透しているか、転じてエロマンガの膣内射精至上主義からの解放と民主化)が気になり、調査しようと思い立ったためである。そうして2015年からの快楽天を全部iPadに再ダウンロードして再読を開始したはいいが、「購入するが使わない」「途中で外す」「2回戦で外す」「ゴムが尽きてから最後にナマ」等の多彩なバリエーションの分類に心が折れて断念した。誰か代わりに調べてほしい。

 なお、価格上昇に対してページ数が増加しているなどのわかりやすい高付加価値化はみられない。下のグラフのように、多少の増減はあれど300ページ前後で推移している。

 話は逸れたが、とにかく快楽天ビーストはとてつもない値上げをしている。

快楽天ビーストは5年で2.7倍に値上げした

・ユリコ・ショック時の値上げは体裁変更を伴っていたが、今度はただの値上げ

・800円は実質500円ではない

・990円は実質500円ではない

 今日はこれだけ覚えて帰ってくださいね。