88 - 202304記録

 衣替えと洗車のタイミングを逃し続けている。

 

■今月のヘッビロッテダヨーミュージック

 4月だからか新曲が多くてプレイリストが長くなった。

open.spotify.com

 

 一番ヘッビロッテダヨーしてたのはKANA-BOONthe peggies北澤ゆうほのやつだった。

youtu.be

 主題歌になっているというアニメは観てない。彼らが組むんだという驚きと、ぼっち・ざ・ろっく!っぽさから来る納得がある。MVのロケ地は仮面ライダーでもよく出てくるBIGHOPモール印西っぽい。信号機の色でやたら心情を表現したがる深夜アニメ表現からポップソングの歌詞への影響があるのかもなーとかぼんやり考えた。「足された気持ちはもう割り切れない」ってすげえいい歌詞。理系は算数が好き……

 

youtu.be

 この春からBSテレ東で放送が始まった来世ちゃん3期OP(メタルバンド仮装のエアバンドOPが恒例になるドラマ、何)のこれもヘッビロッテダヨーしてた。

 急に大きな話になるが、物語とは共感されるべきでない気持ちへ共感させるべきなのだと考えている。誰もが共感するものをそのまま共感的に描いては駄目なのだ。社会的望ましさの低いものへいかに(なるべく多くの観客を)共感させるのか、シリアスであれコメディであれ、そこがクリエイターの腕の見せ所なのだと思う。この原則は、純文学からクソ深夜ドラマまで適用できる。なんならエロ漫画にも。しかし、「共感されるべきでない気持ちへの共感」がテンプレート化してしまうと、誰もが共感するものをそのまま共感的に描くのと同じになり、途端につまらなくなるという問題も内包している。つまるところ肝心なのは、世に埋もれている共感されるべきでない気持ちを、いかに発見して物語にするか、なのだと思う。

 大森靖子の歌詞はこの点で優れているし、来世ちゃんドラマは極端で共感されづらい社会的望ましさの低い気持ちをコメディにする塩梅がすごく上手くて毎回楽しく観ている。シーズン100まで続いてほしい。

 

ガンプラ

 驚くことに今月は2体も完成した。

  HGガンダムエアリアルとHGディランザ。エアリアルティターンズカラーで、一方的に殴られる痛さや怖さを教えてくれそうな感じに。ディランザはメカデザイナー刑部一平氏の俺ディランザを再現してみた。グエルセンパイにケイベツされながらも規定ギリギリまで短くしたツノがチャームポイントである。

 後ハメ加工をしなくてもいい程度に接着して、なんとなく表面処理して、充電式エアブラシで塗装して、段落ち部をアクリル塗料+マジックリン拭き取りで塗り分けて、ハイキューパーツのデカールで装飾して、最後にクリアコート、くらいが一番コスト(作業)パフォーマンスがいい気がしてきた。

 二つ減らしたが1/100FMエアリアルとHGザウォート・ヘヴィとMODEROIDビッグオーが増えているので実質減ってない。どうしてなんだよォ~(藤原竜也

 来月はRG Hi-νガンダムとか作りたい。

 

■読んだ

 ・今泉允聡「深層学習の原理に迫る: 数学の挑戦」

 ・ヘレン・プラックローズ、ジェームズ・リンゼイ「「社会正義」はいつも正しい: 人種、ジェンダーアイデンティティにまつわる捏造のすべて」
 ・中森弘樹「「死にたい」とつぶやく:座間9人殺害事件と親密圏の社会学

 ・播田安弘「日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る」

 ・中村淳彦「歌舞伎町と貧困女子」

 ・ASIOS「謎解き超常現象」

 ・喜多喜久「化学探偵Mr.キュリー」

 

 「社会正義」はいつも正しい~が、面白かったがしんどい本だった。幸か不幸か肯定的にも否定的にもポストモダンに本気になったことがなく、引用されている意味不明で支離滅裂なポストモダンの文章が本質的なものなのか、笑いものにするためにチェリーピッキングされたものなのか判断がつかない。ただ、ポストモダンに影響を受けた「社会正義」思想家・アクティビストたちの支離滅裂な言葉遊びを引用することで面白いのファニー側面を強調する作風のおかげで、とてつもなく難解な文章の羅列でもどうにか読破できる作りになっており、社会学はまったくの門外漢である自分などはその不真面目さに理解を助けられた。

 出版社(早川書房)がネットにアップロードして炎上した訳者あとがきはこのファニー側面を、アンチフェミ的なネットスラングも交えて強調した書き方になっており、本文(の半分)を確かに占めるガチアカデミア成分と並べると、読者が受ける印象はかなり異なっている。ただ、ガチ部分があまりにも意味不明で支離滅裂で筋が通らないので、訳者あとがき的な受け止めは必ずしも間違いではないのだとも思う。

 ちょうど最近興味本位でインターネットにあふれるアンチフェミ言説を覗き見て、彼らのアンチラディカルさ、すなわち、ラディカルレフトと同等の価値の低さにげんなりしていたところだった。インターネットはバトルの世界なのでわざとやってるところもあるんだろうけど、この本のようにアカデミックな生真面目さに軸足を置いたものが出てくると、おかしな方向に突き進もうとする世の中も少しマシになるのかなーと考えたりする。

 

■読んだ②

 先月読んだ分も混ざっている気がする。

 ・ジョジョリオン全巻

 ・藤本タツキ短編集22-26

 ・ドーベルマン刑事 14巻まで

 ・ONE PIECE 105巻

 ・カレシがいるのに 7巻

 ・ULTRAMAN 19巻

 ・風都探偵 13巻

 ・MF GHOST 16巻

 

 急に来たKindle集英社半額で全巻買ったジョジョリオンが滅茶苦茶面白かった。特にSBR以降の荒木飛呂彦は、何が面白いのかを徹底的に研究してどうあがいても面白い骨格を作った上で、極端なセリフやキャラクター、独創的な能力者を乗せて独自の世界観を構築する、という話の作り方をしているような気がする。

 

■のりもの

 名古屋モーターサイクルショーに行ってきた。

 今年で開催は2回目であり、前回よりも来場者数は増えたとのこと。しかし前回より増床したおかげか、今年は各ブースの待ち時間も短かったしそもそも入場待ち行列がなかったので快適だった。東京大阪に続く第3のモーターサイクルショーとして中京圏に定着した感がある。(そもそも4大メーカーのうち3社までの発祥の地が静岡・浜松でスズキは浜松、ヤマハは磐田に今も本社を置いているし、森町のデイトナや浜松のHYOD、クシタニなど周辺メーカーも中部地方に密集しているにもかかわらず展示会がなかったのがおかしい。)

 大型二輪の免許を取ってからずっと乗り換え先を探し続けており、ヘッドライトが丸いネオクラシックのモデルに目移りしがちだった。

 ホンダのCL500。実車を目の前にするとマフラーの派手さはそんなに気にならなかった。現地にはマフラー変更などのオプション装着車両もあり。思ったより細い印象。

 

 同じくホンダのHAWK11、去年に引き続きの展示。渋いシルバーにロケットカウルがイカす。排気系やタンクパッドはオプション装着車両。シングルシートカウルはデイトナのやつ?

 ホンダはCL250とトランザルプが目玉だった。ブースはやや暗めで、シン・仮面ライダーコラボを含むアパレル商品との一体ライフスタイル提案って感じのテーマだった。

 

 カワサキの目玉はなんといってもエリミネーター。跨がり行列がとんでもないことになってて諦めた。レブル250じゃ物足りないけど、500もなあ…って層にメチャメチャ刺さりそう。テール周りの鋲打ちみたいなデザインはなんなんだ。

 

 カワサキで気になってるのはZ650RS。写真よりタンクがたくましい印象だった。ポジションは結構イージーめで優しそう。Z650譲りのショートマフラーがあまり評判がよろしくないようだけど自分はそんなに気にならない。展示は緑(カワサキ臭えェー!)だったけど、エボニー/シルバー系の色や限定だったファイヤーボールカラーが渋くてかっこいい。カワサキじゃなかったらもう買ってた。

 

 ヤマハはYSP(ワイズギア)扱いの外装キット(他山盛りオプション)を装着したXSR900を複数台並べていた。ブラックメタリック+カウルキット+ヘッドライトグリルくらいなら手が出る価格で悩ましい。ヤマハじゃなかったら買ってた。

 

 これは市販されないカスタムイメージ車両で、その名も「Knight of the "9"」。

 

 どんなスタイルにもアレンジしやすいブラック。

 しかしながら、手間ひまを掛ければ新たな魅力が目覚めるはずの“黒”。

 喧騒が去る夜9時を待ち、華やかな街灯に誘われCP3に火を入れる。

 己のヘッドライトだけが頼りの、一体感極まる静寂浮遊空間移動。

 ときおり喉を潤す小休止の一瞬にも、目を惹く機械ディテール。

 Color,Material,Finish,and Graphic.ヤマハが目指すデザイン完成度。

 彷彿される、あのミッドナイトスペシャル。

 あなたの孤高さを体現するカスタムの、無限の可能性を誘う黒いXSR。

 

ってヤマハは言ってる(詠んでる?)。バカなんだと思う。

 一方で東南アジアから日本に導入するらしい125ccシリーズもお立ち台の上でスポットライトを浴びていた。こっちもオプションでロケットカウルが用意されるらしく、ホーク11の影響でロケットカウルブームが到来しつつあるのかもしれない。クロスステッチのシートやタンクパッドもオプションだと思う。ホンダとは違う形で、あなたのライフスタイルへの寄り添い感を演出する木目ステージである。

 

 そしてスズキの注目のニューモデル、新型の775ccツインエンジンを搭載したGSX-8S。癖があるけどすごくかっこいいので不思議である。デカールのミニマルさや色使いにハスクバーナとかのテイストを感じる。

 スズキはブースも独特で、まずブース全体がメチャクチャ明るい。普通のBtoB展示会かってくらい明るい。そして海外メーカーも含めて唯一エンジンを単品で展示している。上の写真のように跨がりに鏡を置いているのもスズキだけだった。そのまま元気にゴーイングマイウェイしてほしい。

 

 その他海外メーカーとか。

 ロイヤルエンフィールドの新型、スーパーメテオ650。OSB合板で組んだ足場の上に置かれていた。ロイエンは最近日本市場への進出を強めているらしくブースも広めだった。ステッカーも手渡し配布していた。

 

 トライアンフのトライデント660。バーエンドミラーはオプションだが、スイングアームにマウントされたナンバープレートステーは標準だった。マジかよ。跨ってみるとすごく安心感のあるタンク形状やライディングポジションだった。ネットで評判調べてみたら減速比がじゃじゃ馬すぎてスプロケ変えましたとか出てきてちょっと泣いた。

 

 スラクストンはな、カッコいいんだけどな、どうみても腰がな、あと値段が……

 

 ベネリのレオンチーノ。こんなにもエントリーモデル然とした姿なのに脚付きがかなりキツいイタリア人仕様で泣かせる。

 

 その他いろいろ

 HRC8耐マシンが展示されていた。カッコいいぜ。

 

 ヤマハのブースにはナカスガサーンの乗ったR1。

 

 そしてコミネブース恒例、コミネマーンフォトスポット。誰も撮ってなかった。

 

 今年は気温がやけに低く(予報-5℃だった)、帰り道で寒すぎて死にそうになったりセントレアラインの橋で横風が強すぎてしにそうになったりしたが、総合的には楽しいモーターサイクルショーだった。

 

 これはSAで見かけたバーチャルキャラクター。

日本気象協会、高速道路休憩施設サイネージにてバーチャルキャスター「沢村碧」の天気予報動画提供を開始~ 効率化と少人化を図りながら 荒天時の安全情報も迅速に提供 ~ | JWAニュース | 日本気象協会

 沢村碧さんというお名前らしい。全然知らなかった。

 

■観た

・映画刀剣乱舞-黎明-

・search/サーチ2

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第3章

仕掛人・藤枝梅安(二)

・ヴィレッジ

聖闘士星矢 The Beginning

 他Summer of 85、ザ・メニュー、ワイルド・スピード1作目~3作目までを配信で観た。

 

■コラム・戦争

 部屋にGが出た。

 そもそものきっかけはアーマード・コア6の発売日決定である。

 アーマード・コア6の発売日が決まる→PS4proを撤去しPS5を買わなければならない→部屋のプレステ設置場所周辺が地獄のように散らかっている→必死こいて掃除をする→部屋に隠れ潜んでいたGを刺激してしまう→Gが出る→戦争 という流れである。Gは我が家への棲息を既成事実としているがこの部屋は本来人類のものであることが国際機関によって承認されており、またドラッグストアからの武器支援が行われたことで現在、戦線は泥沼の膠着状態に陥っている。今ブログをしたためている時も手元にはゴキジェットプロとゴキジェットがある。これが本当のWトリガーってやかましいわ。

 ブラックキャップも買って部屋中に設置したので、この戦争には遠からず勝利できると確信している。

 ちなみに私はGを素手で攻撃することに抵抗感がない方で、今回も素手で攻撃したが逃げられてしまった。床を這っているケーブルのためにヒットしなかったのが原因であると考えられる。早く広く清潔な住環境を手に入れたい。

 

中日ドラゴンズ

 WBCで野球熱が盛り上がったこともあり、今年はペナントレースの情報を追いかけている。小学生くらいの時からどういうわけか中日ファン(当時の監督は星野仙一)である。名古屋には縁もゆかりもなく、親類縁者に中日ファンもいないので、思い返してもなぜ中日ファンになったのかよくわからない。

 今シーズンの中日のことは何も考えたくない。せめてシーズン本塁打王よりチーム本塁打の数が多いといいな。

 

■カウントダウン

 ファット・カンパニー Fate/Grand Order フォーリナー/葛飾北斎 英霊旅装Ver.の発売まであと………………4ヶ月!!!

 今度都内に行く時にすみだ北斎美術館に行ってみようかしら。パラノマサイトの舞台めぐりも兼ねて。

 

 

87 - 202303記録

 花見がそんなに好きではない。桜が嫌いなわけではないが、名所に行きたい気持ちがそんなに湧かない。桜の効能は、私たちが毎日通り過ぎている風景を一変させることにこそあり、どこかの名所の価値を一瞬だけ最大化させることではないのだと考えているからだ。だから花見と称してどこかにわざわざ足を運ぶこともあまりない。生まれや育ちのせいもあるかもしれない。何度か転居した実家は、どこも近所にそれなりの桜の名所があった。だが東京なのでどこも桜より人の方が多く、花を愛でる感じでもなかった。

 それでも働くようになってから、桜の美しさが本当に心に沁みる体験をした。非人道的な長期出張の最中、一日休みになった時が、ちょうど桜の見頃に的中したことがあったのだ。出張先で休日になるような出張ってマジでなんだよ。加えてそこは全国的に有名な桜の名所を有する土地であり、じゃあせっかくだし観に行くか……暇だし……という経緯で足を運んだ。さすが名所、だが田舎。人よりも桜の方が多い。その上、単位面積あたりの桜の数が、東京のどんな名所も比べものにならないほど多いのだ。右を見ても左を見ても、四方八方全部が満開の桜。過酷な労働に疲弊した心にこれは沁みた。なお、地獄の出張は桜が散る頃まで続いたのだった。

 

■今月のヘッビロッテダヨーミュージック

 ありがとうSpotifyのリリースレーダー機能。

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 Hakubiの2ndフルアルバムをよく聴いていた。

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 これ好き。

 

 スカパラ歌モノのYOASOBI幾田りらがゲストボーカルのやつも一押し。

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 たまたまこれが収録されたミニアルバムのリリース前後で谷中敦がラジオに出演して喋っているのを聴いたんだけど、幾田りら(高校時代は吹奏楽部)がトランペットも吹いているのだとか。多芸多才ですごい。

 谷中氏は同じ番組の中で、幾田りらの歌唱力を高く評価した(というかべた褒め)上で、最近のヒットチャートに入ってくる若いアーティストは本当に凄いということを繰り返し話していた。その内容を自分なりに解釈すると、「若い層はオープンソース化された既存のノウハウをフル活用して最短で最先端に到達した上で、さらに独自の創造性を発揮する。だから最近はヒットチャートの曲が音楽的に高水準でかつユニーク。とても面白い」とのことだった。絵とかでも似たようなところがあるような気がするけど、修業コストを最小化した上でさらに高みを目指せる者だけが栄光を掴める世の中ということなのかもしれない。似たようなものばかりになる~~という危惧は目の曇りの証なんだろうなあ。ジェネレーティブAIだってそこに+αして用途に最適化するスキルは磨かないと手に入らないものだろうし。欲を止めたらそこで終わりやで。

 

■観た

・フェイブルマンズ

・エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

・ノースマン 導かれし復讐者

・シン・仮面ライダー

・シャザム!~神々の怒り~

ヒトラーのための虐殺会議

・イニシェリン島の精霊

グリッドマン ユニバース

・対峙

・コンパートメントNo.6

 

 今月は結構観た。話題作があんまり自分の趣味じゃなかったなーという印象が強い。エブエブは母娘のうだうだ・もしもの人生云々かんぬんで話が進まないのがかったるくて寝落ちしたし、ノースマンはゼルダの伝説みたいでなんか笑っちゃったし、シン・仮面ライダーにはキレちまったし。コンパートメントNo.6が一番沁みた。

 それともちろんグリッドマン ユニバース。男子校出身監督の怨念が滲み出るような学園描写は健在だった。女子高生への神聖視から股や脇の一歩手前のパーツに異様にこだわるキャラクターデザインに涙が出そうになる。アニメとは思えないリアルな芝居やBGM無し演出で聖なるものに受肉させようとするその作風は、もはや宗教儀礼そのものである。信仰を示す対象が女子高生ってのはな、思春期の破壊が取り返しのつかない傷跡になってしまった生涯童貞根性男の習性なんよ。付き合ってる男女の距離感が執拗に描写されるのも、男子校出身だとそういうのの認知能力の発達が通常より遅れて、大人になってから脳に雷が落ちるような衝撃と共に認知するからなんだよ。そういう人間がアニメを作ると執拗に”男女の仲”の空気を演出してしまうってこっちゃ。作品っちゅうんはな、そいつが世界をどのように見てきたかが否応なしに出るねん。そういう人間にとってはな、実際の学校(共学校、想像上の存在である女子高生が実在する)を取材することと学校を舞台にしたフィクションに触れることが同値なんや。同じなんや。フィクションと現実を区別しない想像力の力ってのがSF的なメインテーマに据えられてたけど、それは半径1メートルに女子高生が存在する思春期を知らないから実在するはずの現実がフィクションと同値になってしまう哀しみを、前向きに言い換えたものなんや。百聞は一見にしかず、だから千聞・万聞で一見に対抗しようとするんや。それしかできひんのや。わかるぜェ~、すげェーよくわかる!感動!君も泣け!グリッドマン ユニバース!(泣きました、私は男子校出身です)

 

■読んだ

長谷敏司プロトコル・オブ・ヒューマニティ」

・オデット・ガロー「格差の正体 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか」

・飯村周平「HSPの心理学: 科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」」

本橋信宏「迷宮の花街 渋谷円山町」

・齋藤彩「母という呪縛 娘という牢獄」

冲方丁「骨灰」

 

 いずれ劣らぬ良書揃い!と言いたいところだが、HSPの心理学~には絶望の方が勝った。HSPについての市販書で一番マシっぽい本を手に取ったつもりだったけど、開いていきなり正規分布とは何かのやさしい解説から始まるのである。ウチ、HSPかモ…と悩む当事者(?)たちにはそのくらい噛み砕かないと伝わらないという圧倒的現実がそこにあるのだ。商業化した心理学、もっといえばGoogle検索から用意にアクセスできる心理学モドキに救われてしまう人々の素朴な愚かさと集金システムへの接続の容易さ、自己啓発による心理学の成果の濫用簒奪と一体どう戦えばいいのかさっぱりわからん。少なくとも、インターネットを情報源にHSPを自称するのだけはやめた方がいい。本当に悩んでいるなら何か別の、確立された精神医学的な切り口でアプローチした方が人生が豊かになるんじゃないのか?なおこの文はインターネットであることに留意されたし。

 

■コラム・著名人の死

 俳優やクリエイターの訃報を見てもうわ~~~好きでした~~~悲しいですご冥福をお祈りします……みたいな気持ちになることがあまりない。なので訃報が出た時のSNSってのがすげえ嫌いである。でも稀に年単位で引きずる訃報もあり、著名人が死んだって別に友達でもないのに落ち込むとか意味わからん、という一般感覚に必ずしも同化できない。なんだろうなあって頭の隅でずっと考えていたんだけど、最近労働をやり過ごしながらふと、その人の死亡時点での生産性によるな、と気づいた。

 昔ものすごい名作マンガを描いて今は表立って活動していない人とか、最近は出演作が途絶えている俳優が死んでもなんとも思わんのは、その人が死んでも自分が消費するものに特に影響がないからだ。芸名やペンネームがつけばそいつは人間ではなく作品を出力する装置なのだとみなしているっぽく、世の中に広がっているらしい悲しみから完全に取り残される。一方、まだ現役で作品出力機能が十全に備わっている人物の訃報は数年経っても引きずったりする。最近だと津野米咲の死が未だに忘れられず、赤い公園の曲を延々聴いている。京アニ事件の際も、報道を追うだけではいられず献花のため宇治まで足を運んだ。

 で、すると考えるのが、三浦春馬の死を引きずりつづける”春友”さんたちのことだ。

www.tsukuru.co.jp

 時々掲載されるセンセーショナルな犯罪者(植松聖のことです)の獄中手記を目当てにちょいちょい読んでる言論誌「創」には、三浦春馬の死から3年目?になる今も春馬ロスの人々の特集が掲載され続けている。2021年に単行本になっているのだが、最新号の表紙もご覧の通り。去年単行本は第3弾が刊行された。また、今年も4/5から彼の最後の主演映画である「天外者」の特集上映が全国277館で行われる。尋常ではない。映画館に通っている人ならば、そろそろ皆この毎年春の異様に気づき始めたのではないだろうか。

 三浦春馬の死が若すぎたのは間違いないし、これからも彼の俳優としての活動を目にしたかったと思う。しかし私には、創を通じて知った春友さんたちの気持ちがどうにも理解できず、春になる度わからねえわからねえと首を捻ってしまうのだ。少なくとも、まだ俳優としての生産性が残されていたから、ではないのだろう。それはわかる。しかしなぜ赤の他人である俳優のことを自分の一部のように思えるのか、そして彼のことを自分の一部のように思っている人が、なぜ全国277館の特集上映を成立させるほどの規模で存在しているのかが、さっぱりわからんのである。

 素敵なことなのかグロテスクなことなのかもにわかには判断しかねるというか、特集上映に足を運ぶ人とのコミュニケーションの不可能性を感じつつある。そもそもそんな機会はないが。これからも毎年春になるたび同じように首を捻り続けるのかもしれない。

 

TOEIC

 先月の苦行(毎日の学習習慣)の甲斐あって無事自己ベストを更新した。楽天足切りを食らわないくらいのスコアである。やったね。

 場合によっては、成果が数字が目で見えるのはいいことかもしれない。最近のインターネットは人を数字に拘泥させて気を狂わせることに長けているので、あくまで場合による。

www.amazon.co.jp

 これを使ってた。800にちょい届かないくらいの人にちょうどいい意地悪さの難問がこれでもかと載ってて、800越えのためのもうひと押しに効いた実感がある。返ってきたスコア表を見るにリーディングの長文読解問題とかはほぼ落としてなかった。代わりに文法と語彙でポコポコ落としていたのでどうかとは思う。結果として、足場が不安定な状態で上に色々積み上げた違法建築スコアになっているような気がしないでもない。

 なんでもいいけど二度と受験したくない。

 

■プラモデル

 先月接着したところを削った。進捗ダメです。早くモデロイドダイナゼノンを崩したい。グリッドマン ユニバースのダイナゼノン登場シーンがマジのマジのマジでサイコーだったから……。

 棚の容量がどうしようもなくなっていくつか断腸の思いで駿河屋に投げたりもした。

www.at-s.com

 このニュースには驚いた。駿河屋は元々静岡浅間神社の門前商店街の古本屋・太田書店から始まった店であり、経営する株式会社エーツーの名は太田→OOTA→ATOOに由来しているのだとか。それが全国展開し、本拠地静岡の中心市街地空洞化阻止のためにひと肌脱ぐのだと考えるとアツいストーリーである。しかしガンプラの転売・中古価格高騰や不自然に素早く中古市場に高値で流通する再販品のこと、そして静岡市バンダイのお膝元であることを思うと中々ねじれた関係だとも思う。

 現在の本社(静岡県静岡市駿河区丸子新田317-1、駿河屋に頻繁に買い取りを依頼する人間ならそらで書ける住所)は、静岡の駅前から国道1号で安倍川を渡ったところにある。貧者の高速道路国道1号を爆走する時はついつい目が行ってしまう。

 

■ゲーム

 ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドとパラノマサイトをクリアした。

www.jp.square-enix.com

 灯野あやめが癖(へき)にぶっ刺さるのはともかくとして、石山氏のテキスト技術に惚れ惚れさせられる作品だった。絶妙な長さ、絶妙なスペース、絶妙な改行で内容を過不足なく伝えながら、決してテキストが主役にはならず物語を盛り上げる黒子に徹している。本当の名手がファインプレーをしないように、テキストの機能面に気を配っているADV作品は意識しないとその機能の凄さに気づかない。黒子の働きが高く評価されてほしいなと思う。話はもちろん360度見回しの独特なプレイ体験も面白いし。

 キャラクターの喋りにスクストの引き出しを感じることもあったけど、謎解きの五次元力要求と併せて、スクストの血が流れた作品を楽しめるのは幸福だった。サトカ+悠水のような福永葉子、本性が栗本ちゃんな約子、ココナッツ・ベガのリョウコちゃん抜きみたいな人、育ち方を間違えてしまった美山椿芽みたいな灯野あやめ、灯野あやめ……

 

■カウントダウン

 ファット・カンパニー Fate/Grand Order フォーリナー/葛飾北斎 英霊旅装Ver.の発売まであと………………5ヶ月!!!

 葛飾北斎、灯野あやめ……

86 - シン・仮面ライダー 感想

 長々と感想文をしたためるたび、夏休みの読書感想文がマジで苦手な子供だったことを思い出している。

 

■シン・仮面ライダー あらすじ

 出る!倒す!葛藤があるらしい!早口で設定を解説する!出る!倒す!早口で設定を解説する!葛藤があるらしい!出る!倒す!なんかエモいらしい!出る!倒す!早口で設定を解説する!出る!逃げる!早口で設定を解説する!葛藤があるらしい!出る!倒す!なんかエモいらしい!早口で設定を解説する!葛藤があるらしい!出る!倒せない!出る!倒せない!早口で設定を解説する!葛藤があるらしい!出る!倒す!なんかエモいらしい!出る!倒す!葛藤があるらしい!倒した!終わった!

 何????????

 

■シン・仮面ライダー 感想

 自分としては、面白くないし、いいところ探しをするべきではないとすら思う。TVシリーズが前提にある以上、ある程度、駆け足であらすじをなぞる総集編感が生じるのは致し方ないことだと思う。それにしても、ひどすぎる。観客の感情移入を拒否するかのようなシチュエーションと設定の羅列にすぎず、破綻しているのである。何として破綻しているのか? 別に、”何として”にどんな切り口を代入してもいい。”映画として”、”物語として”、”エンターテイメントとして”、”特撮として”、なんでもいい。どの視点から見ても破綻しているからだ。

 最大の課題は、主人公・本郷猛のキャラクター描写が破綻していることではないか。明確に描写される彼のバックグラウンドは、幼少期に警官である父親が暴漢に殺害されたことだけである。以降の人生は、ルリ子から早口で一瞬、語られるだけにすぎない。緑川博士と顔見知りのような描写だから、大学か大学院に通っていたのだろうし、趣味がバイクツーリングであることもわかる。だがその大半が、文字で書かれたものを読み上げた設定にしかなっていない。観客は、一体どうやって彼に感情移入するのだろうか? 父親の死を受けて、どのような葛藤を抱えて彼が生きてきたのか、観客にはまるで伝わらない。伝えるつもりのある映像ではない。だから心が動かない。

 第一幕から第二幕では、仮面ライダーとなった彼の、暴力を行使することへの葛藤とその克服が描かれている……らしい。というのも、本郷の優しさは「優しすぎる」というルリ子のセリフでしか伝えられないし、暴力を行使することへの葛藤も、忙しないPOVや絵面しか考えていないようなロングショット、目を疲労させる手持ちカメラ映像でしか描写されない。優しすぎる本郷に説得力を持たせる映像が存在しないのだ。

 親切で、慎重で、作り手の意図を頑張って読み取ろうとする鑑賞者であれば、感じ入ることもあるのかもしれない。だが映像は、不親切で、大胆で、作り手の意図を伝える努力に乏しい。だから、戦闘員とクモオーグとの戦いに巻き込まれた状態から一拍置いた本郷が、なぜ暴力を行使することを決意したのかが、わからないのだ。だが、勇ましいBGMと共にサイクロン号は疾走する。観客は置き去りだ。そんな状態で決めセリフを吐かれたりド派手なアクションをされても面白く感じられないし、むしろCGのCGらしさやキャラクターの嘘くささに注目してしまう。感情移入なしに、嘘を本物にする物語の魔法はかからない。

 バイクツーリングを趣味にしているらしい本郷だが、サイクロン号への関心が描かれることも皆無である。自動運転でついてきても無関心。ちなみに、本田技研工業が2017年に発表したHonda Riding Assistでは、「手を触れた人の後ろをついていく」ことを実現している。残念なことに、マシンと人の愛着関係の描写?については、現実の方がフィクションを上回ってしまっている。

Honda Riding Assist | CES 2017 | Honda

 

 第三幕は本作最悪のパートだと思う。何せ、オーグ2人を丸ごとカットしても何ら問題ない。まるでコンセプトアートのスライドショーを見ているかのような唐突な場面転換の連続で二幕から切り替わった第三幕は、サソリオーグによる虐殺とそのサソリオーグを集団の力で撃破する警官隊から始まるのだが、血が流れることが明白でも本郷はその状況に特に介入せず、他者に任せきりである。暴力に敏感な心優しい男ではなかったのだろうか? 観客は本郷のことがどんどんわからなくなる。

 そしてハチオーグとルリ子の友人関係でようやく感情移入できるサブプロットが現れる……と、思ったらルリ子の目が光って常人ではないことが明かされてしまう。せっかく食事をするのに栄養補給と言い切って掻き込むだけだし、そもそも何を食べているのか映らない。こうして本郷だけでなく、ルリ子の物語まで観客にとって自分事ではなくなるのである。

 そしてハチオーグにプラーナを吸われて死ぬ人に心優しい男であるはずの本郷はなぜか大きな関心を示さず、なぜか急に「覚悟!」などとカッコいいことを言いながら、しかしなぜかトドメを刺さない。前段でルリ子の物語が観客目線から浮遊しているため、ルリ子が泣いても特に心動かされることはない。すべてがちぐはぐで意味不明である。辻褄が合う解釈も不可能ではないが、頑張って解釈しなければならないのは映像の不行き届きである。三幕の中にはルリ子が子供じみた甘えを見せるシーンもあるが、急に別人格が乗り移ったかのような違和感しかない。ルリ子が影響を受けているらしい本郷・心優しい男・猛の方の描写が支離滅裂であることがその原因のひとつだろう。

 真社会性昆虫であるハチの生態を人間に適用したコミュニティというアイデアは魅力的だし、きっと多くのアイデアが背景にあることだろう。だが出てくる絵面は西野七瀬による洗脳ハーレムである。アルファ個体のメスが子を産み、奉仕するワーカーの中に生殖をしない階層が存在するのが真社会性昆虫であり、これは見方によっては現代の少子化問題の解釈になりえるが、掘り下げはない。作品の社会派エンタテイメント化を必死に拒絶しているかのようだ。

 三幕にも縦糸の話はあるが、サソリオーグとハチオーグとはあまり関係がない。本郷とルリ子の信頼関係が醸成される過程になっていればよかったのだけど、なってないどころか支離滅裂さが深まるので、丸ごとない方がマシである。

 

 第四幕では、主だった登場人物への感情移入が困難な本作における唯一の清涼剤・一文字隼人が登場する。しかし、洗脳に抗い自分の筋を通しているというルリ子の説明セリフは描写のどこを反映しているのだろう。オーグたちはショッカーの理想を忘れエゴに邁進している、だから倒せと緑川博士は語っていたし、クモ、コウモリ、サソリ、ハチはみなその通りである。つまり、全員が自分のエゴ=筋を通しているように見える。洗脳状態の第2バッタオーグと何が違うのだろう。仮面ライダーへの舐めプのことを言っているのだろうか? ハチも刀を渡していたのに?

 早口で説明されても無理がある第2バッタオーグの仮面ライダー第2号への開花を無理矢理にまとめるのは、原典パロディ要素である。1号の負傷要素、漫画の元ショッカーライダー要素、マフラーの視覚要素、涙ラインの解釈要素……すべて、人の感情ではない。だから観客は受け入れることが難しい。洗脳解除時に一文字の泣き顔が映されるけど、いきなり出てきた一文字の過去を高速ダイジェストされて感情移入しろってのは無理がある。

 一応ルリ子は死んでるけど、どこにも心揺さぶるものがない。どうやら目的のために作られたモノ存在が本郷の優しさに触れて人間になって死ぬ感動的なものらしいのだが、そもそも本郷の優しさが意味不明なので、意味不明である。第一、ここまでの本郷はルリ子にとって原則思うがままに動いているのである。人間が他者の存在を実感し影響を受けるのは、その他者がコントロールできないからではないだろうか? 本郷への不適切な描写がルリ子の描写を壊し、ついには一文字の開花からも説得力を奪っているとも考えられる。全編通じて、強固なプロットに服従するキャラクターの弱さが印象的な作品である。逆でなければならない。

 しかし、登場が意味不明だった一文字隼人には、浅間山のシーンで血が通うのだ。写真を撮る。孤独を好きになる、とバイクを語る。親指を立てる。軽口を叩く。世の悪を暴きたいという理想に燃えていたらしき過去と、飄々とした一匹狼のパーソナリティ、そして葛藤に折り合いをつけた証と取れる決めセリフが描かれることで、観客は彼に感情移入することが可能になる。他のキャラクターはどんな人間なのかがまったくわからないので一文字だけが異質、というか、キャラクターとしての最低限の魅力が描かれている。一文字が素晴らしいのではなく、一文字が最低限で他が全部最悪なのだ。

 このように一文字以外への感情移入が困難なまま突入したクライマックスが盛り上がるはずがない。まずしょっぱいCGでギャグのような動きをするショッカーライダー(イナゴなら機械的に動くのはおかしいと思うし群体シミュレーションでもない、何より黄色のアイコンがないのが不満)で出鼻を挫かれる。仮面ライダー第0号!でこれがライダー春映画だったことを思い出し、これまで真面目に首を捻っていたことの馬鹿らしさを思い知る。蝶設定とコンテンポラリー・ダンスシナジーで不気味な悪役を見事に演じた森山未來もこれでは浮かばれない。

 サイクロン号の自爆でごめんねガンバスターする本郷も意味不明である。彼は後ろから自動運転でついてくるサイクロン号になんの感情も示さなかった人間であり、アンチショッカー同盟?がサイクロン号を整備している時も特に口を出すことはなかった。にもかかわらず、自爆させる時にはサイクロン号に語りかける。支離滅裂であり、本郷への感情移入の不可能さがここで極まってしまった。

 加えて、三幕から少しずつ明かされるSHOCKERの最終目的とそれに関する泥仕合中の会話も監督の過去作の焼き直し感が否めないため、いわゆるオタク層の観客の熱量も冷めてしまったのではないだろうか。

 とにもかくにも登場人物、特に主人公・本郷猛への感情移入が蔑ろにされており、面白いと感じることが困難な作品である。陰キャの社会復帰モノとして見ようにもコミットする社会の描写が見当たらない。

 

 実は鑑賞前には、庵野秀明のネームバリューを借りて、仮面ライダーというIPが再び一般層へ広まる契機となるのではないかと期待していた。だが実際の作品は、観客目線の欠如したただの映像の羅列である。出る!倒す!早口で設定を解説する!葛藤があるらしい!の連続を、観客はどうやって自分事として感じればいいのだろうか。

 ジャリ番ならジャリ番の楽しみがあるが、本作はPG12である。一定以上の年齢層が対象とされており、彼らの多くは、仮面ライダーがジャンプしていればそれでいいわけではない。おそらく、話題が行き渡った2週目以降の興行収入はガタ落ちするだろう。広く受け入れられるはずだった仮面ライダーは、これまでと同じく子供たちと特撮マニアのものであり続けるだろう。成功を受けて次回企画の予算規模が大きくなることも、予算規模によって作品の品質が上がることも、上がったことで更に成功し、さらに面白い作品が生まれるという好循環に繋がることもないだろう。

 だからつまらないと言うし、変に制作陣に共感して枝葉を持ち上げるよりも、つまらないと騒いだ方が、長期的には好ましいのではないかとさえ思う。つまんないものにつまんないと言うことを規制されるべきではないし、いいところ探しをすることが正しい態度なのだという考え方に私は賛同しない。駄作を肥え太らせても何もいいことがない。一般人置き去りだけどw加減しろ!w笑 じゃあねーんだよ。マジで。歪さを褒めそやすかのような受け止め方はやめよう。

 とても観客を見ているとは思えない歪な仮面ライダーが二度と生まれないことを、切に願う。

 

■その他、推測が含まれることと、ちょっとした所感

・背景がないとはヒーローの類型でもある。ヒーローには申し訳程度の設定だけがあって、テレビでは大活躍だけが描かれることはままある。ウルトラマンだって事故前のハヤタ隊員のことはよくわからないし、セブンがモロボシ・ダンを名乗る理由を描くエピソードは第1話ではない。ヒーローの背景はしばしばカードのフレーバーテキストや児童書の中にしかなく、本編からは欠落しがちなものだ。本郷猛や一文字隼人も、改造される前の日常がしっかり描かれていたわけではない。

・一方で、歴史を経て仮面ライダーは批評や考察をされ続けてきた。正義のために暴力を振るうことは正しいのか。力を持つ者の責任や悲哀。悪の秘密結社の主張にも時には一理あるのではないか。

・シン・仮面ライダーは、批評や考察の内容、あるいは作り手が仮面ライダーから受け取って咀嚼したものを、背景が欠落した昔気質のヒーロー番組の中に詰め込んだ作品のように見える。

・それは観客目線の欠如である。感情移入を考えないただの羅列に共感し、面白いと思う観客はいない。唯一の例外は、登場人物ではなく監督に共感する人々である。

・同じ俳優の起用は観客目線ではない。

・特徴的なセリフを繰り返すキャラ(メフィラス)がウケたからといって同じことを複数のキャラでやるのは観客目線ではない。

・先走って主役の足を引っ張らないヒロイン像は、観客目線ではなく、SNSノイジーマイノリティ目線である。

・弱くてすぐ窮地に陥るわけではないヒロイン像は、観客目線ではなく、SNSノイジーマイノリティ目線である。

・男女が寝ないしキスしないのは、観客目線ではなく、SNSノイジーマイノリティ目線である。

・「ルリルリ♡」のような百合っぽい関係性の導入は、観客目線ではなく、SNSノイジーマイノリティ目線である。

・こんなにつまらないなら露骨に猫を助けるとか、キスシーンとか、家族愛とかの要素で一本筋を通した方が幾分マシである。

・本郷猛役の池松壮亮は大いに苦労したのではないかと想像する。起点となるトラウマはともかく、改造人間になるまでの人生がまったく台本にないにも関わらず、朴訥・寡黙な中から人間性をにじみ出すような演技をしているのだから。表情で演技させてもらえずPOVやロングショットが使われているし、しかも制作陣は演技にあまり口を出さずにスーツを着たらマフラーの角度を執拗に直すのだという。無理があると思う。

・マフラーの角度より気にすることがあるだろ。

・文芸設定的な部分は面白かった。最大多数の最大幸福ではなく個人の深い絶望を救済するSHOCKER、洗脳解除すると忘れていた絶望が押し寄せて泣く、だからライダーの仮面に涙ラインが描かれている、とか。仮面とコンバーターラングとベルトそれぞれに機能を割り振っているところとか。幸せと辛さの線一本の違いがオーグとライダーの差であるとか。つまんなすぎて観るのが辛・仮面ライダーだけど。

・その他いいところはたくさんあるけど、つまんなすぎて辛・仮面ライダーなのでいいところ探しもしたくない。

・SHOCKER側とライダー側の思想的対立がほぼなかったのが大きな不満である。オーグたちによるエゴでしかない偽りのサスティナブル・ハッピネスを頭脳明晰な本郷が否定したのはコウモリオーグ戦だけだった。人類の数を減らしてやる~~ゲハハハ~~~だったけど。でもここは高齢者が減ることが社会の持続可能性に利するのではないかという議論が実際にあった。ここだけサルでもわかる社会派エンタテインメントになっているというか、程度の低い邦画にありがちな安っぽい社会派要素というか……

・本郷の人物像がよくわからないので人類補完計画への本郷の感想もよくわからない。そもそも仮面越しで何言ってるのかわからない。

・仮面、と意識して表記しているが、マスクではなく仮面と呼んでほしかった。仮面ライダーだし。

・オールドタイプな劇伴の差し込み方が雰囲気をぶち壊しにしていることも指摘しておきたい。これはシン・ウルトラマンにも共通する問題だと感じている。シン・ゴジラの時はジャリ番の美点だけを取り込み無茶な展開に魔法をかけて説得力を持たせる効果を発揮していたが、シン・ウルトラマンと本作ではジャリ番の欠点をも取り込んでしまい、そこにCGにしか見えないアクションが重なることで嘘くささが加速し、映像の価値を毀損している。オールドタイプな劇伴が流れるたびに逆に盛り下がっていると思う。

・信仰上の理由(生命は尊い)で本郷猛と名の付いた男の死は受け入れがたい。たとえ原典パロ要素が盛り込まれていたとしても受け入れがたい。というか本郷猛の死と「ああ、一文字!」bot化が賛否両論の的になるくらい面白い映画ならよかった。生きて、生きて、生き抜け。

・流血と暴力で容赦のない死が描かれているのに、プラーナなんやかんやで主役はそれを回避しているのも変だ。人格を保存することができるならなぜオーグたちを保存せず殺したのだろう。暴力への葛藤とはなんだったのか?それとも再生怪人フラグ?

・最後のシン・サイクロン号のベース車両はCBR650Rだと思う。ヘッドライトの形がそっくり。

85 - 202302記録

 TOEICを受験した。毎年年度末が近づくと勤め先の人事考課の都合で受験することを強いられる。語学力向上に興味がないわけではないが、望む英語の方向性が映画か漫画なこともあり、TOEICのビジネス英語には毎度毎度メチャメチャ苦戦させられている。上司とか振り込みとか、貸借とか資格者とか重役とか収益とかそういう語彙を増やすのがまったくもって苦痛なのである。結果は来月のお楽しみ。

 

■今月のヘッビロッテダヨーミュージック

 

 Spotifyにリリースレーダーという機能があることに今更気づいた。折角なのでそこから持ってきたり、2022年の聞き逃しを集めたりして2023年2月プレイリストを作った。

 

open.spotify.com

 

 NOMELON NOLEMONとChili Beans.が好きです。

 

■読んだ

・西尾元『死体格差 解剖台の上の「声なき声」より』

坂上香『プリズン・サークル』

・吉川徹『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち』

新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー(1)』

TOEICの参考書(二度と読みたくない、二度と)

 

 少ない。TOEICが悪い。芥川賞全文掲載号の文藝春秋を買うだけ買って積んでしまっている。

 サマー/タイム/トラベラーは風呂Kindleのお供になんとなく再読したんだけど、再読のはずが2巻読んでなかったことに今更気づいてしまった。

 

■観た

・『仕掛人・藤枝梅安(一)』

・『バビロン』

・『エゴイスト』

・『別れる決心』

・『アントマン&ワスプ:クアントマニア』

 

 月5作って過去例がないくらい少ない。TOEICが悪い。嘘。ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドを買ったのが悪い。

 

ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド

 面白すぎる。理不尽な死さえも面白いから本当にすごい。行こうと思えば見える範囲は全部行けるし、正攻法がわからなくても結構ごり押しでどうにかなったり、かと思うとセオリーを知らないと理不尽な死を繰り返すことになったり、そういうのが全部面白い。弓矢がなかなか上達しないしボス戦は基本死に覚えだし、ジャストガードやラッシュ狙いの回避は2回に1回は失敗するのに、なんでかわからんけど面白い。オープンワールドゲームのオープンワールドをまともに楽しめているのは初めてかもしれない。

 地味要素だけど、馬に乗った時のコマンドが(A)すすむ じゃなくて (A)Go!なのがすげー好き。

 

■プラモデル

 ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドを買ったのにプラモデルなんか作れるわけないだろ。

 

■観た②

 東映特撮Youtubeチャンネルで五星戦隊ダイレンジャーを毎週欠かさず観ていたのに、主に最終週ですごい労働が来たせいで最終2話を見逃してしまった。

 放送年代と自分の年齢から考えると、ジェットマンジュウレンジャーダイレンジャーカクレンジャーあたりがリアルタイムで観た戦隊になる。Youtube無料配信で機会を得て再見すると、まあ内容はほとんど覚えていないんだけど、恐怖や絶望を感じた話はやけに覚えていたりする。ジュウレンジャーのドーラスフィンクスの回(子供が木にされて何も知らない工事のおっちゃんたちに伐採されそうになる回)とか、ダイレンジャーの道士裏切り回とか。

 信じていた道士が実は悪の軍団の参謀長(絶望)、ダイレンジャーが全滅(絶望2)、一人だけ立ち上がってやっとの思いで道士に掴みかかるリョウに腹パン(絶望3)、このへん滅茶苦茶強く印象に残っていた。しかも見返してみると、やられたダイレンジャーが「くっそォ~~!……ウッ!(立てない)」とかじゃあなく、本当にリョウ以外全員倒れて微動だにしていないからすごい。

 次の回の生身名乗りは覚えてなかったけど、その直後のゴーマ宮からオーラチェンジャーと天宝来来の玉が戻ってくるカットはしっかり覚えていた。キッズは人間には興味がなく、おもちゃと変身後のダイレンジャーしか覚えていられないのかもしれない。

 

 Youtubeの公式配信には引き続きお世話になっていて、VガンダムガンダムZZバイファムザブングルを観ていた。サンライズの方が切り替わって、3月からはダグラムイデオンを観ていこうと思っている。

 ちょうど今週のVガンダムが「おかしいですよカテジナさん!」「母さんです……」回だった。本当にひどいアニメ(最高に楽しんでいる)。

 画像のシーン、この後ヘルメットを受け取ったマーベットが愕然としているのを見るに、慰めている段階ではマーベットは"中身"に気づいていなかったんだろうか。どんな言葉をかけてもらったり寄り添ってもらったとしても、ウッソの苦しみや哀しみはウッソだけのものであり、共感によって慰められる域はとっくに超えているという描写なのかもしれない。

 

 ガンダムZZではなんかエヴァンゲリオンで見たようなルー・ルカのカットを見つけたり。VガンダムのV2飛翔シーンが完全にエヴァなのもそうだけど、庵野秀明が自分の作品はウルトラマン仮面ライダー、ヤマト、ガンダムの割合を変えてるだけだみたいなこと言ってるのも、元の方を改めて見ているとさもありなんだなと思う。

 さておきルー・ルカが可愛すぎる。ガンダムのヒロインではクリスティナ・シエラフレイ・アルスターが好きだったんだけど、ルー・ルカが他を置き去りにしつつある。

 

■健康

 円形脱毛が徐々に快癒しつつある。とはいえ一番デカい脱毛はまだまだ元気に抜けており、周りの小さい脱毛部が毛髪で埋まってきた程度。頭髪のことを気にせずに済むまではもうしばらくかかりそう。

 とかなんとか言ってたら花粉症が始まったので、毎日納豆を食べている。最近興味本位で腸内細菌叢のことを滅茶苦茶に調べたせいで腸内細菌叢さえ整えれば完全に健康になると思っている。特に花粉症とは関係ないがピルクルラクルケアも飲み始めた。そんなにたくさんの期待を背負わされたら腸も迷惑なような気もする。

 

北方領土エリカちゃん

 私が一番好きなツイッターアカウントであるところの北方領土エリカちゃんは、最近予算が増えたのか新規イラストの供給が増えている。四コマ漫画なども投稿するようになっており……

 

 

 このエリオくんの「愛情たっぷりだったピピィ。」とエリカちゃんの「エリオくんが喜んでくれたみたいで嬉しいッピ♪」に巧みな男女のすれ違い描写を感じている。おそらく、エリオくんは、鮭1尾入ってるようなおにぎりを求めてはいない。しかし、エリカちゃんが作ってくれたものだから、喜んでいるふりをしている。そしてエリオくんが喜んでいるふりをしてしまったことで、エリカちゃんは何かをしてあげたという実績を得てしまう。エリカちゃんの幼児性、精神的な未熟さに由来する、一方通行の感情である。同時に、コミュニケーションを怠るエリオくんの未熟さも現れている。

 関係性が深まりすぎないうちはそれでもいい。だが、互いを人生の伴走者としようとすると、この小さなすれ違いから生じるひずみは次第に無視できない負荷となってくる。エリカちゃんは、積み上げた実績に見合う報酬を返さないエリオくんに不満を募らせるだろう。エリオくんは、エリカちゃんの独りよがりな行いを恩着せがましく感じ、だが二人の間に降り積もった時間の長さのために話し合うことができず、ますます沈黙するだろう。愛し合っていたはずの二人の関係は、降伏点を超えた鋼材のように、いつのまにか元に戻れないほど歪んでいるのだ。

 そこへ"影"が忍び寄るのである。"影"はエリカちゃんの愚痴を聞き、エリカちゃんは悪くないよと共感するだろう。"影"はエリオくんに寄り添い、楽になってもいいのにと囁くだろう。"影"は無邪気の殻で着飾った、何者でもない、ただのカニ漁師の娘である。だが彼女には、若い二人の輝く未来を壊すことができる。そう、"影"とは――

 見えるッピ!NTRが見えるッピ!河野太郎はやくなんとかしろ!!!

 

■カウントダウン

 ファット・カンパニー Fate/Grand Order フォーリナー/葛飾北斎 英霊旅装Ver.の発売まであと………………6ヶ月!!!

84 - 202301記録

 202212記録をサボってしまった。

 

82 - 赤線遺構、玉ノ井を歩く - baby portable log

81 - 2022年成人向けコミック雑誌(成コミ誌)サンタコス表紙絵調査 報告書【2022/12/25追記】 - baby portable log

 

 赤線記録とサンタコス表紙絵率調査をもって代えるということで。少なくとも1記事/月のノルマは達成できたからよしとする。今年も継続していきたい。

 

■今月のヘッビロッテダローミュージック

 年末年始から今日に至るまで無限に結束バンドばかり聴いていたような気がする。ぼっち・ざ・ろっく!、面白かった。

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 結束バンドを聴いていたら忘れらんねえよのことを思い出し、これもよく聴いていた。

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 特にバンドやろうぜが好きです。

 

ongakudaisukiclub.hateblo.jp

 音楽といえば2022年分もこの記事を楽しみにしていた。自分の2022ベストアルバムを選ぶなら、

ポルカドットスティングレイ『踊る様に』
・POP ART TOWN『ART MUSEUM』
・TWEEDEES『World Record』
三月のパンタシア『邂逅少女』
H ZETTRIO『kazemachizuki』

 くらいな感じ。あんまり掠らなかった。でもこの記事を見ると好きで聴いてたはずのアーティストの新譜を結構知らなかったりして、Spotifyをメインにしたアンテナってなんかいまいちだなと思ったりする。新しい音楽との出会いメインで、フォローしてるアーティストの新曲情報配信とかあんましてくれないみたい。そういう機能あるのかしら。

 

■健康

 年末に玉ノ井を歩き回り、その翌日に洲崎(木場のあたりにある赤線跡)を歩き回ったら完全に膝が破壊された。新宿で左脚を引きずりながら歩き、マツキヨで膝サポーターと鎮痛剤を買う怪しい男になってしまった。

 自分の身体が破壊されると、多目的トイレや駅のエレベータのありがたみに気づかされる。膝が急に痛くなってサポーターを着けたいとか、鎮痛剤を塗りたい時って、もう多目的トイレに入ってやるしかない。バリアフリーは大事だし、階段しかない施設への憎しみがつのるばかりだった。

 そして11月から発症していた円形脱毛が年始にかけて悪化した。現在頭部の6カ所に脱毛がある。さすがにヤバさを感じて皮膚科に行き、毎日薬を塗っている。人のハゲを笑うな。

 円形脱毛になるのは初めてではなく、思い出せる限りで同規模(親指第一関節くらいの大きさ)の円形脱毛は三回発症している。一回目は大学時代にバイトを始めた時、二回目は就職活動、三回目は労働でビジネスホテル軟禁生活を送っていた時。全部労働が悪い。健康に暮らすには労働を辞めねばならない。猫、または犬になりたい。

 

■読んだ

 202212~202301で。

冲方丁『アクティベイター』

・上間陽子『裸足で逃げる 沖縄の夜の少女たち』

・林智裕『「正しさ」の商人 情報災害を広める風評加害者は誰か』

・鈴木 忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』

永井荷風『濹東綺譚』

・リュック・ベリノ『0番目の患者 逆説の医学史』

・石川幹人『超心理学 封印された超常現象の科学』

・ロバート・コルカー『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』

佐藤正午『月の満ち欠け』

・レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』

・木下斉『まちづくり幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか』

・古谷田奈月『フィールダー』

・上野正彦『法医学事件簿 死体はすべて知っている』

・川名壮志『記者がひもとく「少年」事件史 少年がナイフを握るたび大人たちは理由を探す』

 

 最近はノンフィクション嗜好が強まって、小説を読んでもあまり夢中にならなくなってきた。マルドゥックシリーズは新作を読むたび脳味噌が焼けるような興奮があるんだが。

 でも図書館に行くようになって、読書週間がだいぶ戻ってきた。ハードカバーは買っても読まないから文庫、文庫を買っても積むから電子、iPadが重いからKindle Paper Whiteと推移して、2週間で返却期限が来る図書館でハードカバーを借りて読んだりしている。最初に戻っている。何事も締め切りがあるってのは大事である。

 

■観た

・MEN 同じ顔の男たち

・ブラックアダム

ラ・ブーム

ラ・ブーム2

・あのこと

・マッドゴッド

仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル

・THE FIRST SLAM DUNK

・RRR

ペルシャン・レッスン 戦場の教室

蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE

・ケイコ 目を澄ませて

 

 寒くなって血が騒ぎ二輪を転がしていたりしたので映画館が比較的遠い年末年始だった。何かを得るには何かを犠牲にしなければならない。

 年末年始で印象に残ったのは、やっぱりラ・ブームのデジタルリマスター2本かもしれない。ソフィー・マルソーといえば007の悪役だったので、こんな可愛い時期(当時13歳)もあったのかと驚いた。それと観た映画館の環境が悪かった。年末に新宿のシネマカリテで観たんだけど、待ち時間に主題歌がマジでエンドレス無限キャタピラー再生されていて開演前から脳が完全にラ・ブームされる。そんな状態で観たらどんな映画でも傑作になるっつうの。

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 ある世代にとってはいい意味でトラウマものの挿入歌なのだとか。あるいは食傷という悪い意味で。そもそも「ブーム」ってのはフランスでいうホームパーティやブロムのような若者たちに一般的な出会いイベントなのだそうだ。つらい風習である。で、ズンチャカドンチャカした音楽が流れている会場で、アンニュイになってるオンナノコがちょっと気になるオトコノコに後ろからスッとヘッドホンを被せられて、この曲が流れて恋が始まっちゃうっていうシーンが当時メチャクチャに受けて伝説になったらしい。

 

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 Youtubeにまさにそのシーンが転がっていた。確かに今見ても極めてエモーショナルである。たぶん、30代~40代の日本人からすると岩井俊二の『打ち上げ花火~』におけるForever Friendsに相当するんだと思う。

 

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 世代ごとに世代をブチ抜く青春映画体験ってのがあるんだろう。たぶん5年後には『君の名は。』と前前前世がそのポジションに収まっている。

 そんなわけで(Filmarksの記録が正しければ)2022年に映画館で観た映画は76本だった。だいたい例年80本前後に落ち着いている。

 

■のりもの

 冬はバイクのバッテリがすぐ死ぬ。ここ最近は血の騒ぎを感じてバイクで浜名湖を一周したりしている。ルートにもよるが60kmほどになり、1時間程度で回れるので休日のひとっ走りにちょうどいい。チャリやスゴいスポーツカーで走っている人もよく見かけるし、路面にはサイクリングコースの案内があったりする。海は冬に行くに限る。冬の海には、夏に海に行きそうなやつが見当たらないのがいい。

 今のバイクに乗り続けてもうすぐ丸7年になり、そろそろ乗り換え時である。だがいまいちこれと決められる新車がなく、乗るならこれがいいという旧車は旧車すぎて難しくなっている。HAWK11(デカすぎる)とCB650R(ネオすぎる)とCL500(もうちょいパワーが欲しい)とSV650X(もうちょい楽に乗りたい)とXSR700(ヤマハはカス)の間で無限に迷っている。ホーネット派生のクラシックが出るならそれで決まりなんだけど。

 

■プラモデル

 ちまちまHGディランザを作っている。デザイナー刑部一平氏の俺ディランザっぽくしたいなーと思っているがいつになったらできあがるのかわからない。そうこうする間にもHGエアリアル、ファラクト、モデロイド数体が積み上がっている。とうとうHGペーネロペーまで届いた。そろそろ限界なので腹を括って駿河屋するしかないかもしれない。

 

■徘徊

 12月は新しいタイヤを履いた車で日本平を走りつつ、2023年3月で閉館する東海大学海洋科学博物館・自然史博物館に行っていた。

 ダイナソーの骨。ディプロドクスとタルボサウルスが対決してるみたいに組まれててすごくよかった。

 

 海洋科学博物館の方はバイオミメティクスロボットが多数展示されていて面白かった。面白かったが、がらんとした館内で虚無い動きをしているロボットが多数並んでいて、たまに子供がわーー!!って近づいてきて、なにこれ…って顔してまた走り去って行く光景はなかなら心に来るものがある。閉館もやむなしなのかもしれない。

 

 こんなんが山のようにあって、ボタンを押すとモソモソ…って動く。これは確かグソクムシ模倣だったような…。

 

 いつか必ず南海トラフ巨大地震が起こる土地柄、津波模型があったり。湾内に桟橋みたいな堤防がひとつあるとある程度津波の進行を抑えることができるってのが見所らしい。

 

 東海大学自然史博物館近くの海水浴場に面した無料駐車場からの富士山。冬は空いてるので愛車と富士山を一緒に撮影したい時とかにいいかもしれない。/^o^\フッジッサーン 

 

 猫は可愛い。

 

 年末は東京に行ってスカイツリーに登ったり、前述の通り赤線巡りをして膝が壊れたり、靖国神社遊就館でユニークな歴史認識を拝見したりしていた。

 これはすみだ水族館の錦木千束と井ノ上たきな。

 

 年始からは浜名湖周回とかばかりであまり遠出をしていない。

 初詣はバイク神社として知られる大歳神社に行ってきた。鐵馬御籤というバイク(スズキ・カタナ)の形をしているおみくじがその筋には有名である。

 

 こんな。

 

 輪っかにしてハンドルバーなどに取りつけられるお守りも売っている。一体何HRCあるいはCBR1000RR-R Firebladeなんだと言いたくなるトリコロール色は限定品らしい。お守りに限定品とかあるんだ。

 さすがに年始だったためかひっきりなしにバイカーが訪れていた。今年も無事故無違反で楽しいバイクライフをやっていきましょう。

 

■カウントダウン

 ファット・カンパニー Fate/Grand Order フォーリナー/葛飾北斎 英霊旅装Ver.の発売まであと………………7ヶ月!!!(延期した)

83 - 2023年1月19日報道 大阪 女児性的暴行事件の報道を比較する

www.jiji.com

 

 本件、報道各社によって背景の報道内容が異なるため、消える前に記録を残し、後日閲覧可能にしておくことにした。動機は、性犯罪とポルノの関係を断定的に語られること、またそれにより、主に成人向けコミックにおいて表現が萎縮し、真に迫った表現が自粛せざるを得なくなるまたは禁止されることへの強い危機感である。

 前提知識として、日本には時事通信社共同通信社のような、自社の新聞媒体を持たずに各社に記事や写真を提供し、その対価を得る事業を行う通信社と、通信社から提供を受けて自社の新聞媒体を用いて報道する新聞社がある。同一の事件に対する報道でも、新聞社は、通信社の記事をほぼそのまま紙面にするところと、独自取材の内容を追加するところに二分される。そして後者の内容には、その媒体の編集指針や読者層のニーズが反映される。殊に今回のような、『漫画の影響を受けて犯罪を行った』と取られる事件の場合は、そこに各社の思想や党派性が反映されるため、我々市民は平時に増して報道を注視すべきである。

 なお、現状の報道からは、『漫画』のタイトル・媒体も不明であるし、『犯罪』のうちどの部分に影響を与えたのか、また容疑者のその供述が妥当であるのかも全く不明であり、不用意な判断や憶測は厳に慎むべきである。漫画じゃなくてCG集かもしれないし、雑誌掲載作品かもしれないし同人誌かもしれないし、18禁かもしれないし全年齢かもしれない。影響を受けたのはカッターナイフを使う部分かもしれないし、ターゲットかもしれないし、押し入る手順かもしれないし、その前段階のストーキングかもしれない。繰り返すが、曖昧な情報に基づく憶測の発信は慎むべきである。

 また、本記事はあくまで各社の報道内容の比較が目的であり、その思想・党派性の糾弾は目的とせず、比較対象とする箇所を最小限のみ引用するに留める。同時に、容疑者(被告)への攻撃も目的としないため、記事引用で実名が含まれる場合は伏せ字に置き換えた。

 

時事通信社

www.jiji.com

表題:性的暴行容疑で26歳男逮捕 女児10人、帰宅後狙う―大阪府警

閲覧日時:2023/01/20 22:12

漫画への言及:なし

参考引用:容疑を認め、「一人で留守番している女の子を狙った」などと話しているという。

備考:通信社。

 

共同通信社

www.47news.jp

表題:女児10人に性的暴行疑い 男再逮捕、入念に下見か

閲覧日時:2023/01/20 22:20

漫画への言及:なし

参考引用:府警によると「被害者が言うならそうです」と容疑を認めている。

備考:通信社。

 

朝日新聞社

www.asahi.com

表題:女児10人に性的暴行などの疑い 逮捕の26歳男「成人だと通報が」

閲覧日時:2023/01/20 22:20

漫画への言及:なし

参考引用:容疑を認め、小学生の女児を狙ったのは「成人女性だと抵抗され、通報されるかもしれないと考えたから」と供述しているという。

備考:共同通信社からの記事に自社取材内容を追記したと思われる。

 

朝日新聞社

www.asahi.com

表題:留守番する女児10人に…性的暴行容疑などで男を逮捕「漫画まねた」

閲覧日時:2023/01/20 22:26

漫画への言及:あり(成人向け漫画

参考引用:容疑者が長いときで約1年にわたり準備していたと確認。女児を待ち伏せし、玄関ドアを開けたところで室内に押し入るなどしていたことから、現場の防犯カメラの設置状況も下見し、周到に計画していたとみている。●●(伏字は本記事作成者による)容疑者は「大学生のころに読んだ成人向け漫画の内容をまねた」と供述しているという。

備考:有料記事。1本目と同じく共同通信社からの記事に自社取材内容を追記したと思われるが、わざわざ2本目の記事を出して「漫画まねた」という見出しを追加している。『成人向け漫画』と書かれている。

 

毎日新聞

mainichi.jp

表題:性的暴行の疑いで26歳を送検 計10人が被害か 大阪府警

閲覧日時:2023/01/20 22:33

漫画への言及:なし

参考引用:●●(伏字は本記事作成者による)容疑者は「成人女性は抵抗して通報するかもしれないので、女児だけを狙った」と容疑を認めているという。

備考:記事配信時点で起訴されたため、容疑者から被告になっている。見出しは被害者の多さを強調するものになっている。

 

産経新聞

www.sankei.com

表題:帰宅直後の女児狙い性的暴行 6年で被害10人 逮捕された26歳男の悪質手口

閲覧日時:2023/01/20 22:36

漫画への言及:あり(アダルトサイトで見た漫画

参考引用:●●(伏字は本記事作成者による)容疑者は「大学生のころ、アダルトサイトで見た漫画の内容をまねした」と供述している。

備考:産経らしい扇情的な見出し。確認する限り、「アダルトサイト」と漫画を見た経路を特定している報道は産経のみだった。時期を「大学生のころ」としているのも同様。

 

■読売新聞

www.yomiuri.co.jp

表題:小学生女児10人に性的暴行、元病院職員の男を逮捕…保護者不在時を狙う

閲覧日時:2023/01/20 22:29

漫画への言及:あり((わいせつな内容の)漫画

参考引用:被告は容疑を認め、「(わいせつな内容の)漫画の手口をまねしてやった。女児なら抵抗されないと思った」と供述しているという。

備考:記事配信時点で起訴されたため、容疑者から被告になっている。見出しは犯行時の状況を強調するものになっている。

 

NHK

www3.nhk.or.jp

表題:大阪 行動確認し 女児7人に性的暴行 元病院職員を起訴

閲覧日時:2023/01/20 22:43

漫画への言及:あり(以前見た漫画

参考引用:これまでの調べに「成人だと抵抗されて通報されると思ったので、小学生をねらった。以前見た漫画をまねした」などと供述し、認めているということです。

備考:記事配信時点で起訴されたため、容疑者から被告になっている。+3人への起訴は別で行った事実を重視し、他報道のように合算していないと思われる。

 

■FNN系列 - FNNプライムオンライン(関テレ)

www.fnn.jp

表題:女児10人にわいせつ行為の疑い ナイフなどで脅して 防犯カメラの確認など入念に計画か

閲覧日時:2023/01/20 22:47

漫画への言及:あり(エロ漫画

参考引用:●●(伏字は本記事作成者による)容疑者は容疑を認めていて「エロ漫画をまねて小学校の女の子の後をつけたりして、住んでいる家や家族構成など女の子の行動を何日も確認したのちに、女の子を待ち伏せして犯行に及んだ。小学生の女の子だけにこのようなことをしたのは、成人女性だと抵抗されて警察に通報されるかもしれないという考えがあったから」と話しているということです。

備考:詳細で表現に遠慮がないが、エロ漫画を強調する意図は見受けられない。媒体特有の者だろう。強調しているのは計画性である。

 

JNN系列 - TBS NEWS DIG(MBS

newsdig.tbs.co.jp

表題:女児待ち伏せ家押し入り“性的暴行”1年以上女児の行動下見か 元病院職員の男再逮捕

閲覧日時:2023/01/20 22:55

漫画への言及:なし

参考引用:調べに対し●●(伏字は本記事作成者による)容疑者は容疑を認めていて、「成人女性だと抵抗されて警察に通報されるかもしれないと考えた」などと供述しています。

備考:映像の右肩で強調されているのは”抵抗されるかも”である。視聴者に逮捕された男を見下させようという思惑が垣間見える。

 

 

 2大通信社と5大新聞(-日経)、それに国営放送とJNN、FNNのニュースを確認した。NNN、ANN、TXNでは報道記事を確認できなかった。感想は……朝日はオタク系への当たりが……強い!(知ってた速報)

82 - 赤線遺構、玉ノ井を歩く

 玉ノ井といえば永井荷風の濹東綺譚である。年末の帰省(帰省とは名ばかりで、都内某所の実家には決して足を踏み入れずそのへんのビジネスホテルに泊まる)の宿が諸般の事情で隅田川の東側のエリアになり、いい機会なので玉ノ井を歩いてみることにした。

 

 最寄りは東武スカイツリーライン(なんだよこの路線名)の東向島駅である。きちんと旧 玉ノ井とつけているのが偉い。駅の隣には東武鉄道が運営する博物館があり、玉ノ井駅時代の模型が置いてあったりとかつての地名へのリスペクトが感じられた。

 

 せっかくなので岩波文庫で濹東綺譚を買い、移動の時間潰しも兼ねて久方ぶりに再読した。それによると、玉ノ井の私娼街は大正通りの南北にのべつまくなしに広がっているようなことが書かれている。だが、これらは空襲で壊滅的な被害を受け、戦後もう少し北側のエリアに移動している。戦後に作られたものなので、銘酒屋(飲食店という体でアレする場所)というよりカフェー(飲食店という体でアレする場所)の体裁を取っていたようで、今回歩いたのはこのエリアである。建物はさすがに年月を経てほとんど残っていないが、空襲で焼け残ったためか迷宮(ラビラント)と荷風が評した入り組んだ路地は健在である。戦争はないに越したことはない。

 東向島の駅から線路沿いに北上すると、濹東綺譚の挿絵にある手描き地図の中にも書き込まれている「大正通り」と交差する。現在は「いろは通り」と呼ばれているようだ。線路沿いの商店街と比べると少し落ち着いた雰囲気の住宅街である。ちなみにこの道を直進するとエリアの区切りである鐘ヶ淵通りと交差し、その先に東武スカイツリーライン(本当になんなんだよこの路線名は)の鐘ヶ淵駅がある。時代劇が好きな人には、秋山小兵衛の隠宅の所在地として知られた地名だろう。

 

 大正通り。濹東綺譚の描写を読むに、荷風の時代には猥雑で生命が延びる気がする繁華街だったそうだ。この左(北)側が今回の目的地である。

 進むと………

 

 目抜き通りの右手と比べ、左の見通しの悪いこと。これが迷宮の入口である。

 

 一歩踏み込むと複雑に入り組んだ路地。ツーリングマップルスマートフォンもなかった時代にはさぞ難儀したことだろう。歩く間に、「こっちでいいんだっけー?」「うんそっちー!」「えー?」などと言い交わすママチャリ主婦3人組の会話が聞こえた。地元住民たちにもこの迷宮は悩みの種であるようだ。

 では、目についた趣ある建物の写真をいくつか。当然ながら、現在は趣があるだけであり、単に築年数の深い建物も含まれると思われ、これらの当時の用途については問わないものとする。

 

 改装されている建物がある一方、現在進行形で取り壊され更地になっている場所も多い。

 

 ここはいかにも往事を偲ばせる外観だった銭湯「墨田湯」の現在の様子。Googleストリートビューでかつての姿を確認できる。

 だが、玉ノ井については、建物が消えても路地が残る。

 

 見事なS字。吉原の大門跡のあたりを思い出すこんな景色がエリア全体を占めているのだ。やはり公認されて周囲から区切られた歴史のある土地と私娼窟では異なるのだろうか。どんなに建物が消えてもこの路地が残るとあれば、我々のような好事家には喜ばしいことであるし、きっとこれからも多くの人を惹きつけることだろう。

 直前にスカイツリーに登りソラマチ周辺の華やかなエリアを散策したこともあり、迷宮の印象が鮮烈だった。玉ノ井は有名な赤線遺構エリアであり、永井荷風の力もあってかネット上に多数の散策録が残されている。しかし、こういった土地は日々建物が消失し、かつての雰囲気が失われていくのが常である。ある時、誰かが歩き、その時点の記録を残し公開することで、集団による定点観測を行うことには大きな意義があると考えるものである。